沖縄の純貯蓄額の突出した小ささがこれまで社会問題化しなかったのは、おそらく各種の社会保障制度にバックアップされているからだろうし、人口の高齢化が全国で最も緩慢なおかげだろう。しかしながら、このまま放置していたら、沖縄県民の家計は崩壊して県経済も立ちゆかなくなる。

 なぜ、純貯蓄額がこれほど低いのかについてはさらなる検討が必要だが、貯蓄が所得と消費の差額の集積であるという事実からして、県民1人1人がより大きな所得を得られるような方策を地道に積み重ねていくほかない。県民の消費スタイルにも問題はあるかもしれないが、まずはより多く稼ぎ、より多く貯蓄することが必須だ。

 目下、台湾や中国などからのインバウンド(訪日外国人)のおかげで、沖縄は空前の「観光景気」を迎えている。全国最低だった失業率も大幅に改善し、同じく全国最低だった1人当たりの所得も少しずつ上昇している。

 一方で、一部に投機的な動きもあり、土地価格や賃貸価格には高騰の気配もある。いずれにせよ、「暮らしの糊代61万円」では、一時の好景気に浮かれている余裕などない。政府の全面的な協力の下、県独自の経済政策・産業政策の実施によって「経済成長」を図ると同時に、県民の間の所得の分配構造を改善することが急務だ。

 今回の参院選沖縄選挙区では、先に述べたのと同じような問題意識を持って立候補した自民公認で公明と維新が推薦する沖縄経済界の若手リーダー、安里繁信氏と、埋め立てに反対する「オール沖縄」が選んだ無所属の野党統一候補で、立憲民主、国民民主、共産、社民、沖縄社会大衆党が推薦する琉球大名誉教授の高良鉄美氏ら4氏が立候補した。
沖縄選挙区で当選を決め、玉城デニー沖縄県知事(左)と握手する高良鉄美氏(右)=2019年7月、那覇市
沖縄選挙区で当選を決め、玉城デニー沖縄県知事(左)と握手する高良鉄美氏(右)=2019年7月、那覇市
 事実上、安里氏と高良氏の一騎打ちで高良氏に軍配が挙がった。が、冒頭で触れたように「辺野古埋め立て」にこだわり続けるような政治のあり方では、「暮らしの糊代」を増やすことは難しい。県民1人1人が、沖縄の直面するリアルな経済の現実に気づき、一刻も早く事態を改善しないと、予想を超えた厳しい事態を迎えることになるだろう。

 人は万能ではない。一つのこと(たとえば埋め立て反対)に注力したら他のことがおろそかになるのが常だ。県民にとって何がより重要かを明確に認識することができる政治家だけが沖縄の現状を変えられる。もはやイデオロギーに基づくイデアリズム(理想主義)の時代は終わった。客観的なデータに基づくリアリズム(現実主義)こそが沖縄に求められているのである。

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