田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)
参院選の期間中、「韓国への輸出管理問題が選挙目当ての対応である」という皮相な見方が存在していた。とりわけ韓国メディアでは、このような論調が多く見受けられた。
他方で、日本でも同様の見解を主張する人たちも少なからずいた。だが、輸出管理問題は、あくまで安全保障上の問題であり、中長期的な見地から採用された日本政府のスタンスだ。選挙が終われば終息すると考えるのは、よほど道理を心得ない人たちであろう。
その参院選では、事前の予想とほとんど変わらない形で、与党が勝利した。確かに、マスコミのしばしば指摘する「改憲勢力」の3分の2議席獲得には届かなかったが、もともと改憲にどこまで熱意を持っている「勢力」なのか疑問がつく。
では、その「勢力」とされる公明党は本当に改憲志向だろうか。公明党の参院選のマニフェストにある「『重点政策』4つの柱」には、憲法改正は含まれていない。むしろ、政治的温度としてはほとんどマイナスに近いのではないか。
こうして見ていくと、「改憲勢力」とは、マスコミのほとんどでっち上げに等しい「線引き」でしかないように思う。つまり、「改憲勢力」が3分の2に達しても達しなくても、政治的にほとんど意味を成さないのではないだろうか。
用語一つとっても、マスコミによる自作自演の印象操作的手法は相変わらず深刻である。それはちょっとした見出しの違いからも誘発されている。
例えば、いわゆる「元徴用工問題」について、日韓請求権協定に基づく仲裁委員会の設置に韓国政府が応じなかった。これを受け、19日に河野太郎外相が南官杓(ナム・グァンピョ)駐日韓国大使を外務省に呼んで抗議した。

河野氏の抗議は極めて正しい。韓国政府が日韓請求権協定を事実上裏切る態度を続けていることは極めて深刻であり、国際法上でも認められない暴挙だろう。