若林亜紀(ジャーナリスト)

 参院選が終わった。静かな参院選だった。投票率は50%割れで戦後2番目の低さだった。

 私はこの選挙に、政治素人ばかりで集まった政治団体から立候補した。私は、お役所の無駄遣いを取材するジャーナリストであり、汚職を減らす非政府組織(NGO)「トランスペアレンシー・インターナショナル」の日本代表を務めている。

 今年5月に元レバノン大使で作家の天木直人氏から電話があった。

 「ぜんぶ費用をもつから、参院選に出てくれないか? 比例代表で。新党を作ったので、候補を10人そろえなければならない。男性ばかりなので女性がほしい」
 
 聞くと、元衆院議員の小林興起氏、千葉県議会議員の西尾憲一氏、市民運動家の黒川敦彦氏らと共に参院選出馬のために「オリーブの木」という政治団体を作り、資金を貯めてきたそうだ。
 
 参院の選挙区で議席を得られるのは、自民や立憲、公明、共産といった、既存の大政党にほぼ限られる。天木氏は、作家として全国的な知名度がそこそこにある。そこで全国にわたる比例代表で立候補を目指していた。だが、参院比例は、個人では立候補できない。国会議員が5人以上いるか、直近の選挙で2%以上の票を得た政党、あるいは10人以上の候補を擁立する政治団体でなければならない。

 そのため、既存の政党に入らずに立候補するには、10人を集めなければならないのだ。

 ちょっと調べてみると、参院比例で当選するには、党名および個人名の票が計100万票必要だ。とてもそんな数はとれない。いったんは断った。

 が、国会で「老後資金2000万円が不足する」との年金報告、消費増税、ホルムズ海峡での日本船への攻撃に端を発する米国によるイラン攻撃の呼びかけなど、私や天木氏の専門とする事件が次々に起こり、このタイミングなら当選があるやもしれないと思い、立候補することにした。

 メディアは公示日(選挙運動の開始を告げる日)に「安倍政権の6年半を問う、年金・増税・憲法焦点に」などと報じた。だが、実際報じられるのは、自民、立憲、公明、国民、維新といった主要政党の党首や候補者の動向ばかり。

 新党の動向は報じられず、私たちの政治団体はなかなか存在すら知ってもらえなかった。
福島駅前で選挙活動する「オリーブの木」の黒川敦彦氏代表(右)ら
福島駅前で選挙活動する「オリーブの木」の黒川敦彦氏代表(右)ら
 党は選挙区で一人300万円、比例区で600万円という高額の供託金を出すのが精いっぱいで、広告費は出せない。供託金は、選挙に立候補するために国に払い込む、いわば受験料のようなものだ。

 遊び半分の立候補を防ぐためというが、事実上、一般の人が気軽に立候補できない壁となっている。既存の政党は、議員一人につき年に約1億円の政党助成金を税金から得ており、これを選挙費用や宣伝費に充てているようだ。