リレーのバトン渡しは、前走と次走が腕を思いきり伸ばし、目視を入れながら、バトンの端から端で受け渡すオーバーハンドパスが一般的だ。走行距離は短くするが、リレー段階で減速し、次走者の体勢が崩れて加速も鈍る。アンダーハンドパスの場合は、次走者が加速しながら差し出す手のひらに、加速・接近してきた前走者がバトンを下から収める形になる。

 2人の走者が加速状態で、互いの腕振りの過程で渡すのが理想。スピードの段差を消し滑らかな連続継走を追究する―。だったら、みんなやればいいと思うが、アンダーハンドパスはチームの呼吸が整わないとできないのだ。互いの歩幅、呼吸などを合わせるためには、選手のセンスと共に、合宿などでの親密な交流が重要になる。国内向け、ともいえる。

 7月のロンドンでは1走から多田―小池―桐生とつなぎ、アンカーに初めて白石黄良々(23)を起用した。サニブラウンが故障で欠場したための応急措置、それでも日本歴代3位の37秒78だった。オリンピックでは当然、9秒台の3人をつないで頂点を狙いたいところだ。が、順風満帆ともいかない。

 個人競技の陸上競技で、スプリンターは100メートル、200メートルの進歩を追究する。リレーは、あくまでも特殊種目である。各選手に、国内だけでなく世界の舞台が求められていることは前段で触れた通りで、サニブラウンはアメリカの大学で日々研鑽(けんさん)して10秒を切った選手だ。アンダーハンドパスの「代表チーム」とは離れた認識の下で競技生活を送っている。合宿をするからと、昔のように召集することはできないだろう。

 東京オリンピックの陸上競技で最も活躍が期待されるのは、男子の競歩と400メートルリレーである。いくらメダルが取れるからと言っても、個人競技の本質部分を見落とすと、おかしなことになる。
男子400メートルリレー準決勝に出場したサニブラウン・ハキーム(手前)=2019年6月5日、オースティン(共同)
男子400メートルリレー準決勝に出場したサニブラウン・ハキーム(手前)=2019年6月5日、オースティン(共同)
 現段階では、1走に堅実な多田を置き、そこから小池、桐生、そして最後はサニブラウンの爆発力に頼むのが理想の順番だろう。スタートが苦手とされるし、アンカーならバトン継ぎは1度でいい。10月にドーハで行われる世界選手権の舞台がぶっつけ本番の試験になる。代表と個人―。サニブラウンのバトンさばきをよく考えたい。

■元公務員ランナー川内優輝と「いだてん」金栗四三の共通点
■宗茂が語った「箱根駅伝『物語』はもういらない」
■大坂なおみは今のメンタルで戦い続けられるか