大井幸子(国際金融アナリスト)

 ビットコインやフィンテック-金融とITの融合によって、さまざまなイノベーション(技術革新)が続く。そして、フェイスブック(FB)が、新たな「暗号資産」リブラ(Libra)を発表した。だが、リブラの出現を先進7カ国(G7)諸国は歓迎するどころか、脅威と受け止めているようだ。

 果たして、リブラは既存の金融システムへの挑戦なのか。本稿では、通貨の本質から問題のありかを解きほぐし、今後の課題を読み解いてみたい。

 そもそも、通貨発行ほど素敵なビジネスはない。通貨発行権は「打ち出の小づち」である。

 通常、通貨発行権は主権国家の中央銀行が持っている。通貨の信用性はその国の経済力や政治力、軍事力などを総合した「総勢力」で担保される。

 FBは世界に27億人のユーザーを有し、リブラはSNS(会員制交流サイト)プラットホーム上でユーザー同士が取引できる「世界共通通貨」を目指す。

 しかし、リブラはリアルな「法定通貨」ではない。それなのに「世界共通通貨」になれるのか。

 米議会の公聴会の様子からしても、リブラはビットコインなどの暗号通貨とは扱いが違うようだ。暗号通貨は、分散化されたネットワークで管理者不在の自由な取引所で値付けされ、売買される。しかし、ビットコインでいくら儲けても、東京ではビットコインで支払いができる店が限られ、円に交換しないと買い物ができない。
2019年7月、フランス・シャンティイで行われたG7財務相・中央銀行総裁会議で集合写真に納まる麻生財務相(前列右端)ら(AP=共同)
2019年7月、フランス・シャンティイで行われたG7財務相・中央銀行総裁会議で集合写真に納まる麻生財務相(前列右端)ら(AP=共同)
 このように、暗号通貨はバーチャルで私的な取引所で売買され、最も投機的な資産とみなされている。取引所は元締めが儲かる賭博場のようなものだ。