これに対して、リブラには実際の資産の裏付けがある。スイスのジュネーブに「リブラ協会」を置き、その信託会社には米ドルや主要通貨で資産が預けられ、資産は短期債などで運用される。

 この信託財産は、いわば中央銀行の準備金のような存在で、リブラは国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)のような存在にも見えてくる。しかし、SDRが通貨として流通することはない。

 金融面から見ると、リブラの保有者は、この信託資産に裏付けられた「信託受益権(ユニット・トラスト)」の保有者ともいえる。リブラ保有者同士が交換する場合の、価値の基準値は信託財産の価値が反映され、その意味で、この信託会社は運用会社にも見えてくる。そうであれば、運用の良しあしで資産価値は変動することになる。

 それでは、FBは運用会社になってしまったのか。FBの収益モデルが変わったのだ。

 FBの収益の源泉は広告収入のみで、収益の伸び率は2016年の54%から2018年には37%に減り、このままでは間もなく成長が止まる。そこで、「プロジェクト・リブラ」が始まった。

 当初のプランでは、「FBクレジット」での支払いを可能にして、手数料収入を増やすつもりだった。しかし、このやり方では「世界共通通貨」の発行は不可能である。

 通貨の重要な機能に「決済」がある。決済ビジネスは巨大な装置産業である。巨大IT企業GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)でさえ、グローバルなクレジットカード会社のシステムを一から構築するにはコストも時間もかかる。

 しかも、決済機能は既存の銀行業務と連携しており、参入障壁は高い。そこで、FBクレジットもVISAやマスターカードと協力体制を築くことになった。
米フェイスブックが計画するリブラのロゴと、仮想通貨を模した硬貨=2019年6月(ロイター=共同)
米フェイスブックが計画するリブラのロゴと、仮想通貨を模した硬貨=2019年6月(ロイター=共同)
 現に、Apple Payやアマゾンもまた、eコマース(電子商取引)をクレジットカードに連動させることでビジネス拡大を狙う。Apple Payは電子端末をスマートフォンやスマートウォッチに備えることでカードそのものを取り出して決済する手間を省き、利便性を追求している。