GAFAは大量の個人の取引データを蓄積しており、同様に膨大な個人の信用データを蓄積しているクレジットカード会社と提携することで、両者はwin-winの関係を築こうとしている。具体的には、両者はクレジットカード会社が徴収する取引手数料とデータ共有による利益を分かち合うことになるだろう。

 21世紀のデータは、20世紀の石油に匹敵する「富の源泉」である。油井を掘り当て、蓄積・精製し、ユーザーに届けられるまでの、アップストリームからダウンストリームまでの垂直統合を成し得た数社が寡占する状態になるだろう。すでに、米司法省はGAFAが反トラスト法(独占禁止法)に違反していないか調査に乗り出している。

 さて、通貨には、富を生むマネーと生まないマネーがある。評論家の小室直樹氏は「通貨は経済の顔である。通貨は資本になって初めて意味がある」と名言を残した。

 通貨は実体経済と結びついて、企業活動として活用され、つまりは資本として設備や人材に投資され、モノやサービスの価値を生み、経済成長を持続させて初めて、人々の生活を豊かにしてくれる。

 その点からみれば、リブラがいくら世界中で交換され、取引されてもそれだけでは富を生むことはなさそうだ。なぜか? 資本主義的な生産体制に投資される資本になり得ていないからだ。

 さらにいえば、通貨が資本として増殖されていかなければ、通貨の価値は持続性を失う。つまり、リアルな経済力の裏付けがなければ、その通貨の信認はやがて失われる。
2019年4月、米サンノゼで基調講演するフェイスブックのザッカーバーグCEO(共同)
2019年4月、米サンノゼで基調講演するフェイスブックのザッカーバーグCEO(共同)
 極端な例を言えば、ベネズエラのような経済が破綻した国家では、自国通貨の信認はなくなり、国民は国外から物資を調達するためにドルかビットコインで決済しなければならない。

 以上の意味から、実体的な経済活動に直結しないリブラは極めてバーチャルな存在なのだ。