2019年07月30日 11:29 公開

南米ブラジル北部の刑務所で29日、対立するギャング組織に属する受刑者の間で抗争があり、少なくとも52人が死亡した。

北部パラ州のアルタミラ刑務所で午前7時ごろ、ギャング組織「コマンド・クラス・A(CCA)」に属す受刑者たちが、同じ刑務所内の別の区画に侵入し、対立組織「コマンド・ヴェルメーリョ(赤コマンド)」の受刑者たちを襲った。暴動に発展した騒ぎは5時間続いた。

州政府などによると、16人が頭部を切断されたほか、刑務所の一部が放火されたことから40人近くが窒息死した。刑務所内の構造が原因となって火はたちまち燃え広がり、大勢の窒息死につながったという。

刑務官2人が人質にとられたものの、すでに解放された。攻撃の目的が刑務官ではなく、対立ギャングだったからだと、州政府は説明している。

州政府は、事前の警告や予兆はなかったと述べた。

ブラジル・メディアが刑務所の様子として伝えた映像では、少なくとも1つの棟から煙が立ち上っている。ほかの映像には、屋根を伝って歩く受刑者の姿が映っていた。

アルタミラ刑務所の定員は200人だが、事件当時の受刑者は309人。当局は、過密収容の状態にはないと話している。

攻撃に関わったギャング幹部は、特定できれば連邦刑務所の独房に移送する方針という。

ブラジルの刑務所で暴力事件が起きるのは珍しくない。世界3位にあたる約70万人が刑務所に収容されており、過密収容が大きな問題となるなか、対立ギャング間の抗争や、受刑者の暴動が頻発している。

今年5月には、アマゾナス州マナウスの4カ所の刑務所で計40人が殺害された。その前日には、近くの刑務所で乱闘騒ぎが相次ぎ、計15人が死亡していた。

2017年1月だけでも、複数の刑務所で130人以上が死亡した。これは、国内の2大ギャングによる抗争が原因で、暴動の長期化につながり、やがて受刑者数百人が別の施設に移送された。

昨年10月に当選した極右・社会自由党のジャイル・ボルソナロ大統領は、国内各地で刑務所を増設すると共に、施設内の警備強化を約束している。しかしほとんどの刑務所は州政府の管轄下にあるため、大統領の一存による改革は簡単ではない。


なぜブラジルの刑務所で暴動が頻発するのか

・過密収容

十数年前から暴力や麻薬関連犯罪の摘発を強化したことから、受刑者の数が一気に拡大した。

受刑者であふれる刑務所内で、対立ギャングを引き離しておくことが難しくなったほか、限られた食べ物やマットレスなどの備品を奪い合う受刑者同士の対立が悪化した。

・ギャング抗争

ブラジルの刑務所では、ライバル・ギャング同士の殺し合いは頻繁に起きる。

特に、サンパウロの麻薬組織「州都第一コマンド(PCC)」とリオデジャネイロの「赤コマンド」の二大組織が20年間結んでいた「休戦協定」が破綻したことから、刑務所内での抗争もさらに悪化した。

・資金不足

ブラジルの刑務所の多くは、資金不足に苦しんでいる。

そのため刑務官は薄給で訓練不足だ。それに対して、受刑者は人数で勝っているだけでなく、多くの場合は長期刑で服役中のため、失うものはほとんどないと過激な行動に出がちだ。これは慢性的な構造といえる。

(英語記事 Brazil jail riot in Para state leaves 52 dead as gangs fight