プーチン氏は今年6月に大阪で開催されたG20の直前、フィナンシャル・タイムズのインタビューで、欧米諸国を厳しく批判した。

 「現代の自由主義といわれる思想は結果的に、時代遅れになっています。その思想のいくつかの要素は、単に現実とマッチしていません。多文化を認めることが大切です。移民問題が発生すると、自由主義思想は機能不全を起こし、自国の住民の利益を優先するハメに陥っているのです」

 プーチン氏の発言は、移民と難民への対応で苦慮するアメリカとヨーロッパ諸国にはびこる民族排外主義を念頭に置いている。自由主義を掲げてきた諸国の自己欺瞞を非難しているかのようだ。ただ注意しなければならないのは、プーチン氏は自由主義に代わる新しい思想を打ち立てているわけでも、まして移民問題を解決する施策を提案しているわけでもない。

 ロシアにも中央アジア諸国からの出稼ぎ労働者の問題が生起しているが、プーチン政権は武力で弾圧しているだけである。国際政治は一般的な理念よりも国益を優先に、ときには陰謀や策略も辞さないリアルポリティックスの時代に逆戻りしているかのように映る。まさに弱肉強食の権力政治家が跋扈するのである。

 日本は、北方領土交渉でプーチン政権にすっかり揺さぶられてしまった。平和条約の締結さえも、困難な状況にある。プーチン氏は2019年6月22日、ロシアの国営テレビ局のインタビューで北方領土を日本に返還する「計画はない」と言明した。

 そして、8月2日にはメドベージェフ首相が択捉島を訪問する。実は択捉島、国後島、色丹島には2011年以降、中国の水産関連企業が進出し、新しい工場が続々と建設されている。

 2018年9月には中国の通信機器大手「ファーウェイ」が、サハリンと北方3島を結ぶ光ファイバー回線の海底敷設工事を完了した。北方領土はいまや、中露蜜月関係のシンボルのように見える。最悪の場合には中露首脳会談が択捉島や国後島で開催されたり、中露軍事演習が北方領土で実施されたりする事態も想定しておかねばならない。

 日本を取り巻く国際状況をざっくり描くと「日米+α(EU)」と「3G+α(北朝鮮、トルコ、イラン、シリア)」の対立構図が浮き彫りになる。ただトランプ大統領は自国ファーストを掲げており、必ずしもEU諸国と友好的とは言えない点があり、日本への反発を強める韓国は「3G+α」に寝返るかもしれない。そうなれば、3Gの最前線と立たされる日本の防衛政策は緊急に再検討を迫られる。

 米ソ冷戦は両国が直接的に衝突しなかったという点では、日本では「祈りの平和」で済んだ。でも現状は、緊迫度がまったく違う。日本に近い朝鮮半島、日本が天然資源を依存する中東、さらにはベネズエラ内戦(「アメリカ」と「ロシア、中国、北朝鮮、イラン、トルコ」の勢力に分断)など地雷はいくつも点在している。ちょっとした事件や小競り合いを契機に、アメリカと中露が軍事的に全面衝突する危険性は十分にある。
G20大阪サミットが閉幕し、トランプ米大統領(右)と握手を交わす安倍首相=2019年6月29日、大阪府大阪市
G20大阪サミットが閉幕し、トランプ米大統領(右)と握手を交わす安倍首相=2019年6月29日、大阪市
 だからこそ、日本の防衛政策を根本的に考え直す時期にきている。明治維新もそうであったように、日本は外圧があってこそ、自国を変革できる。集団自衛権を含む憲法改正の必要性を、皮肉にも「新冷戦」が迫っている。

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