その根底にあるのが、中国の国家資本主義に対する不信感である。技術なり、あるいは盗んだ情報なりを吸い上げて、国や軍に渡してしまう可能性を危惧している。

 「いかなる組織及び個人も、国の情報活動に協力する義務を有する」という中国の「国家情報法」(2017年6月)の第7条や、中国のハイテク発展ロードマップである「中国製造2025」などが、トランプ政権の危惧をより大きくさせている。それもあって、第5世代移動通信システム(5G)を基盤とするハイテク武器への影響が問題となり、最大手の華為技術(ファーウェイ)に代表される中国通信系企業の製品の利用に対して、大きな制限をかけようという動きがあるのは言うまでもない。

 トランプ政権の動きも急だ。2019年度国防権限法(2018年8月)では米政府の情報システムの調達企業からファーウェイと中興通訊(ZTE)、海能達通信(ハイテラ・コミュニケーションズ)、杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)、浙江大華技術(ダーファ・テクノロジー)という中国企業5社を排除した。

 その他、大統領令13873(サイバー空間などで国家安全保障にリスクがあるとする企業の通信機器をアメリカ国内の企業が使うことを禁止)、商務省のエンティティリスト(米連邦政府の許可を得ることなく、外国企業が米企業から部品などを購入することを禁止)などでの規制強化を進めている。

 G20という多国間の国際秩序が、中国という「異分子」をうまく飼いならせなかった現実にあって、多国間秩序を引っ張ってきた米国そのものも大きく変貌しつつある。

 ただ、2020年の大統領選に向けて、トランプ氏にとっての最大の懸念は景気後退である。トランプ氏としても支持者への影響を考えながら、貿易の面では少しずつ取引や妥協をしていく可能性もないわけではない。

 貿易問題では、ある程度合意できるかもれない。しかし、安全保障上の脅威としての中国の問題は、既にトランプ政権だけでなく民主党を含む、ワシントンのコンセンサスとして広く認識されるようになっている。

 米国の対中世論全体を見ても、中国に対する一般の見方も厳しくなっているほか、安保では民主党側も相乗りしている。これまでには机上の空論とみられていた中国を米企業のサプライチェーン(部品調達網)から外す「デカップリング」論も正面から議論されるようになっている。
中国・北京にあるファーウェイのショールーム=2019年5月20日(UPI=共同)
中国・北京にあるファーウェイのショールーム=2019年5月20日(UPI=共同)
 安保の面での「中国叩き」はだいぶ続くとみられる。米国とソ連の「冷戦」は代理戦争を含めて、実際にかなりの軍事衝突があった。今回の米中の場合は、当面の軍事衝突こそないものの、軍拡が続く中国をけん制しながら静かに展開する「冷たい戦争」が長く続くものとみられる。

 形骸化するG20の向こう側には、米中の激しい2国間対立の世界が広がっている。