吉川 私はトランプが苦戦しそうなのは、ハリスという民主党上院議員ぐらいだと思っています。ハリスは黒人で女性ですが、それ以上にトランプと同じように2016年までワシントンにいなかった。冷戦終結以来のワシントン政治は、ローテーションで同じ顔ぶれが政治を行ってきました。政治家も、官僚も。彼らの理性一辺倒でマニュアルにはまった政治では、もうアメリカの国家も国民生活も保てなくなっています。そこで今までワシントンにいたことのないトランプが出てきたと、私は考えています。今年3月に出版した『救世主トランプ-“世界の終末”は起こるか?』(近代消防社)でも、そのように書かせて頂きました。

 それを考えるとハリスならトランプと良い勝負ができそうに思いますが、2000年や2016年のような状況になっても、地方の保守的な票の力でトランプが勝つでしょう。そもそもハリスは新人議員で思想的にも穏健派とは言えない。民主党の候補者になるのも簡単ではないと思います。

 ハリス以外は左翼メディアに応援されていてもアメリカ国民の多数からも嫌われている極左か、あるいは2016年以前のワシントン政治にどっぷり浸かってきた、それも親中派的な候補が多い。今アメリカでは左翼メディアまでが反中です。それを考えるとトランプと似たような3人目の独立候補が出て票が割れない限り、トランプは再選されると私は今の段階では思っています。

 その反中国テクノロジー競争の話に戻すと、5Gでアメリカが中国を上回れば、サイバー攻撃で中国に対抗できるという算段もあるでしょう。

 今年の春ぐらいにワシントンでずいぶん評判になった、ブルッキングス研究所のオハンロン氏の著書の中で、「もし尖閣が中国に占領されたらどうするか」ということが書かれていました。日本の海上自衛隊と米海軍で取り囲んで、あとは中国に経済制裁をした上で、サイバー攻撃みたいな形でやんわりと出て行ってもらうというのが主旨です。これがアメリカでずいぶん評判になったのですが、裏を返せばアメリカとしては日本のために本気の戦争はやりたくない、自国の若者の血を日本のために流したくない、という空気になっているということですね。

 イラン攻撃も、トランプは実際の攻撃を思いとどまった後、サイバー攻撃を考えたとされていますが、そのサイバー攻撃をイランは撃退したと主張しています。イランも北朝鮮もロシアの技術が入っており、米中だけではなくロシアも入って、イラン、北朝鮮、ベネズエラが駒として動いています。北朝鮮とイランの間には、おそらくロシアの仲介により、ミサイルや核の協力関係があるとされています。アメリカの裏庭のベネズエラに、イランの支援する国際テロ組織の支部ができて、ロシアも軍事顧問団的なものを送っているようです。

 非常に複雑な立体地図の中で、トランプとプーチンと習近平がどう動くのか、それに対して日本も先読みして安倍晋三首相がどう動くか。それによって日本がこれからの生き残れるのか決まってくると思います。
G20首脳会議のデジタル経済に関する特別イベントであいさつする安倍晋三首相(中央)。左はトランプ米大統領、右は中国の習近平国家主席=2019年6月、大阪市住之江区(代表撮影)
G20首脳会議のデジタル経済に関する特別イベントであいさつする安倍晋三首相(中央)。左はトランプ米大統領、右は中国の習近平国家主席=2019年6月、大阪市住之江区(代表撮影)
 宮崎 もう一つ、昨年の10月4日に、ペンス米副大統領が演説で「われわれは今までハッカー戦争で受け身だったけれども、これからは攻撃型に変える」と言っています。それと宇宙軍を作ることも明言しています。

 これがどういうことかと言えば、例えば5Gで中国が先んじた場合、通信速度は現状の100倍ぐらいになる。今0・001秒差ぐらいなのが、0・00001秒ぐらいの差で中国のハッカーが米国防総省(ペンタゴン)の中枢に入り込んで命令系統をズタズタにしたら、アメリカは戦えない。だから宇宙軍を作って、アメリカが先に中国の指揮系統を叩く、そういう戦争になっていくと思いますね。