吉川 そういうことも今までのワシントン政治では既成勢力の予算獲得競争などで上手くいっていなかったのが、トランプが大統領になってから軌道に乗り始めた。そのようなサイバー攻撃や宇宙軍がしっかりしていれば、超音速で飛ぶミサイルも、事前に宇宙から索敵しておいて撃墜することなどもしやすくなります。そういう新スターウォーズ構想のようなものをトランプは中間選挙の後に明らかにしました。

 最初のスターウォーズ構想は、レーガン大統領が言い出したものです。まったく同じことは当時のソ連には技術的にできなかったから、ソ連は降参して冷戦は終結したわけですが、それと同じような形にもっていこうとしているのではないかと考えています。

 宮崎 ソ連の場合、経済制裁を受けていましたが、ソ連には全く輸出するものがなかった。原油とウォッカとマトリョシカくらいじゃないでしょうか。でも、中国は山のように輸出するものがあって、外貨が入ってくる。だから、経済的に中国を干すというのはなかなか難しい。つまり、ソビエト型の崩壊というシナリオは考えにくいでしょう。

 吉川 そうでしょうね。ただ国際政治の理論で、「軍事競争というものは量的な競争であり、量的な競争をやっていれば接戦になるので熱い戦争になるけれども、質的な競争は一方が急激に伸びて圧倒的に勝つ可能性があるので、もう片一方が何らかの形で降りざるを得なくなる」という考え方もあります。米ソ冷戦はそういう形になったわけですが、今回の米中の5Gやサイバーというのも、質的競争で決着がついてくれればいいなと思います。

 宮崎 先ほど米中対立は、次に金融戦争になると言いましたが、アメリカにはもう一つ癪(しゃく)に障っていることがあるからです。それは「ドル体制」という戦後のブレトン・ウッズ体制を中国がひっくり返そうとしていることです。

 中国が進めているのは、まず人民元の勢力圏を作ること。アジアインフラ投資銀行(AIIB)なる奇怪な銀行をつくって、それから国際通貨基金(IMF)に人民元が入ってきた。そして通貨スワップ、もしくは人民元決裁権を方々に広げています。例えばタイでは食堂に入っても人民元が使えるぐらいです。ロシアとの貿易決済も一部人民元にしています。

 これをどうやってアメリカが食い止めるかなのです。つまり、通貨覇権を絶対に死守するということですが、これから使うであろう手というのは、中国の外貨を払底させるというのが一番でしょう。そうすると人民元という価値がぐっと下がりますから。二番目に実行するのは、中国の銀行の信用力を崩壊させることです。こういうわれわれには全く見えない手を打っているのだろうと思います。完全に機密になっているので、今は想像でしか言えませんが。

 ただ、こうした状況を見ていると、中国は自壊が始まっているようです。何しろ、中国の負債総額が日本円で6千兆円ぐらい、一説によれば9900兆円という見方もあります。ただ、中国の国内総生産(GDP)は1千兆円ぐらいあるでしょう。このGDPの飛躍をどこで止めるかですが、そもそも大半が不動産投資です。だから簡単で、金融を閉めたら不動産投資にいかない、いかないばかりかこれまで不動産のローンを組んだ人たちは相当哀れな結末になるのではないかと思います。要するに、アメリカが金融面における攻撃を始める前に、中国が自滅していくのではないでしょうか。すでに包商銀行が危うくなって、中国政府が救済しました。徐々にアメリカで起きたサブプライムによる破綻で起きたリーマン・ショックと似た状況になっている。中国政府もまだ小さな銀行は助けますが、次に大手がひっくり返ったときは危ないですよ。
評論家の宮崎正弘氏=2019年7月、東京都千代田区(三尾郁恵撮影)
評論家の宮崎正弘氏=2019年7月、東京都千代田区(三尾郁恵撮影)
 吉川 アメリカの新聞を見ているだけでも、25%の関税のおかげで輸出ができなくなって困った中小企業を助けるために、そういう中国の大手銀行が積極的に貸出するように中国政府が命令して貸し出した。しかし、お金をもらった中小企業は何をやっているかというと、どうせ新しい工場を建てても輸出はできないから、不動産投資をやっている。どんどん中国経済の実態がなくなってきているわけで、関税政策が中国の金融崩壊を速めているのは確かですね。