しかし、監督が選手のプレーに感情を表すことは、心理学的視点で考えると決して悪いことではありません。人には「社会的促進」と呼ばれる効果があります。

 これは、人が見ていてくれることでパフォーマンスが上がる現象です。ただし、「物理的」に見ていてくれる人がいるということだけではありません。

 「心理的」に見ていてくれる、つまり心の中に見ていてくれる人がいることも大事なポイントです。人は心の中に「人が住んでいる」生き物なので、どのような人が心の中に住んでいるかによって、大きな影響を受けるのです。

 そして、人の脳というものは、人の感情に強く反応します。つまり、感情をあらわにする人ほど印象に残るのです。

 したがって、「矢野ガッツ」によって、矢野監督は選手たちの心の中に住むことができるのです。そして、「自分のプレー(いいところ)を見ていてくれる!」と感じさせることで、社会的促進をもたらすといえるのです。

 特に、監督という大将が心の中にいてくれることは、大きな促進効果があります。人にはおのおの「社会脳」というものがあり、「社会脳」は本能的にリーダーを求めます。そして、リーダーに評価してもらい、褒め称えてもらうことに喜びを感じるように作られているのです。
延長12回、サヨナラ満塁本塁打の高山(手前)と抱き合い、大喜びの阪神・矢野監督=2019年5月、甲子園
延長12回、サヨナラ満塁本塁打の高山(手前)と抱き合い、大喜びの阪神・矢野監督=2019年5月、甲子園
 皆さん偉い人に褒められて、嬉しくなったりやる気がアップしたりした経験はありませんか。リーダーに褒められると、脳はドーパミンで知られる報酬物質を分泌するので、私たちはとても気持ちよくなります。

 この状態になれば、ストレスホルモンを減らすため、免疫系が活発になって健康状態も向上します。余計なことも考えずに済むので、自分のミッションにより深く集中できます。