フランスには国営放送があるが、戦意高揚放送といった戦前の反省から日本は避けてきた。しかし、今では多数の民放もネット放送もあり、会員制交流サイト(SNS)を通じての情報受発信も活発である。NHKが国営化されて政府寄りの放送になっても、逆方向での情報提供は十分に可能になった。

 もちろん、NHKが公共放送の目的を果たしているか、過剰に政府寄りになっていないかは監督する必要がある。その役割は国会が担えばよい。

 こうして、国営化で受信料を払っている人と拒否者の間の不公平は解消される。NHKの番組が税金で制作されるのであれば、全ての国民にはそれを見る権利がある。図書館に誰でも入館できるのと同じだ。

 そうすれば、もちろんスクランブル化など一切不要になる。テレビを持つ人にもスマートフォンで見る人にも分け隔てなく番組が提供されるべきだし、これは過去番組も同様である。ネット配信に関する規制は国営化を機会に廃止すべきだろう。

 市場性や視聴率を重視する民放では少ない報道・教育番組などに、NHKは番組編成を特化すべきだ。大河ドラマや『チコちゃんに叱られる!』は民放に移せばよい。民放がそれぞれ長時間の歌番組を特番として流しているのだから、紅白歌合戦もいらない。甲子園の高校野球をNHKとBS朝日が同時に全国放送する必然性はない。

 NHKが番組編成を特化すれば、娯楽番組などの比重が高い民放は国営NHKと差別化できるようになる。番組に絞り込めばNHKのチャンネル数が削減可能になる。NHKは国営化の代償としてチャンネルを返上するのがよい。
フランスの民営テレビ「TF1」(ゲッティイメージ)
フランスの民営テレビ「TF1」(ゲッティイメージ)
 返上チャンネルを利用してテレビ局の周波数配置をやり直せば、600~700メガヘルツにかけての周波数が空く。それを移動通信事業者に回せば、国民はいっそう移動通信の利便を享受できるようになる。番組編成の特化とチャンネルの返上はNHKの経営スリム化につながり、投入すべき税金額を減らすという効果を生む。

 NHK改革とは、N国が主張するスクランブル化ではない。国営化を柱に、番組編成の見直し、チャンネル数の削減などについて議論を行うべきだ。国営化には、広く国民に情報を提供するという公共放送の機能は残し、移動通信の帯域を増やすなどの利点があり、民放もNHKとは違う種類の番組で視聴率が確保できるはずだ。