氏がぶっ壊したのはNHKでなく、既存メディアの閉塞(へいそく)性。いや、壊したという表現は適当でない。マスメディアの新しい一形態を作り出した「創造主」なのだ。

 そして、氏は新たな挑戦をする。2013年、氏から私の携帯に留守電が入っていた。
 
 「議員を目指します、よろしく」

 氏は、「NHK受信料不払い党」(後の「NHKから国民を守る党」)という政治団体を設立する。そして、複数の自治体の市議会議員選挙に立候補しては落選、2015年に千葉県船橋市議会議員に初当選した。だが、2016年には市議を辞職して東京都知事選に立候補し、政見放送で「NHKをぶっ壊す」と連呼して注目を集めた。2017年にはまた複数の市議会議員選挙に立候補して東京都葛飾区議会議員に当選、2019年に辞職して大阪府堺市長選に立候補し落選した。

 めまぐるしい選挙の連続である。しかし、それによって氏はよくも悪くも知名度を上げていった。そして、夏の参院選である。

 選挙には、「3バンがいる」といわれる。「地盤」「看板」「カバン」である。地盤とは、選挙区において投票したり、選挙を手伝ってくれる人がいるという地縁である。看板は知名度。かばんは選挙資金である。

 詳しく説明すると、地盤として、国会議員の選挙では、選挙のポスターを貼ったり、選挙運動をしてくれたり、自分の支援者に投票を頼んでくれたりする、地元の議員がいることが必要だ。これが既成政党の強みだ。逆もまたしかりで、地元議員の選挙のときは国会議員が応援をする。それでも看板として大物政治家や有名人がいればメディアが取り上げ、選挙運動をあまりしなくても当選することもありうる。

 また、選挙というのはお金がかかる。まず、供託金。地方議員なら60万円、都道府県知事、国会議員なら300万円、比例枠では600万円かかる。その金は、当選か、かなりの善戦をしなければ没収される新人にとっては事実上の捨て金だ。
会見する、NHKから国民を守る党の立花孝志代表(中央右)=2019年7月1日、東京都新宿区の都庁(宮崎瑞穂撮影)
会見する、NHKから国民を守る党の立花孝志代表(中央右)=2019年7月1日、東京都新宿区の都庁(宮崎瑞穂撮影)
 立花氏は、この3バンを一人で短期間に集めた。2016年の東京都知事選で、秋葉原で街頭演説をする立花氏を見た。そのときは、スタッフは一人か二人で、誰も立ち止まる人はなかった。けれども、今春の統一地方選ではN国の党員を募って、大都市圏を中心に47の自治体で候補を擁立、26人を当選させた。そして、彼らを先の参院選の選挙運動のスタッフとした。