横浜駅でN国の参院選の街頭演説を見たが、20人近いスタッフがそろいのジャンパーを着てビラを配っており、存在感を増していた。参院選の選挙資金は、ユーチューブを通じて一口300万円、年利15%の借金で集めたという。

 誰にも知られている、というほどの知名度はなかったが、選挙戦術で補った。それは、参院選において、なるべく多くの選挙区に「かかし」と言われる候補を立てることだ。選挙区の候補は公設掲示板にポスターを貼ることができる。このポスターで「NHKをぶっ壊す。NHKスクランブル放送の実現。NHK受信料を払わない人を応援します」とシンプルな主張を訴えた。ワンイシューの主張は分かりやすい。

 さらに、政見放送を最大限に使った。氏は政見放送の冒頭で「NHK職員による不倫路上カーセックス」というスキャンダルを話した。後半は、ポスターに書いたと同じ主張である。全国の「かかし」候補たちも同じ主張を行った。中には「既得権にあぐらをかくな、バカヤロー」とだけ連呼する候補者もいた、賛否両論だが、存在も知られない新党も多い中、注目をひいて党名が知られたことは間違いない。

 「参院選か知事選に出れば、政見放送で6分間、自分の主張ができる、ラジオや再放送を含めると30分になる。新聞の選挙公報も配ってもらえる。コマーシャル代に換算したら一億なんかじゃきかない。NHKプライムタイムの広域放送で30分主張できると思えば、供託金の300万円はお得だ」(立花氏)

 荒唐無稽な言い分に見える。だが、実際、政党が全国紙に広告を出せば、3段抜きの広告だけで300万円近くかかる。購読者は数百万人、NHKの政見放送は視聴率2~5%、視聴者200万~500万人。確かに政見放送は効率がいいのである。マスコミ出身者ならではの、合理的な発想である。
 
 露出が増えれば、たとえ落選してもユーチューブの視聴者が増える。氏は「選挙は主張のためのツールだ」とさえ言う。
 
 こうして立花氏は当選。N国も選挙区での得票が2%を超え、法的に認められる「政党」となった。「どうせ政治は変わらない」「議員は二世か官僚ばかり」という、国会議員への高い参入障壁をも「ぶっ壊した」のだ。
比例代表で当選が決まり、笑顔で記者会見する政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志代表=2019年7月22日、東京・赤坂
比例代表で当選が決まり、笑顔で記者会見する政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志代表=2019年7月22日、東京・赤坂
 今後、氏が本当に「NHKをぶっ壊す」のか、それとも、これまでしてきたように、既存の閉塞状況をぶっ壊し、新しい価値を創造していくのか、注目していきたい。

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