2019年08月11日 13:57 公開

大勢の少女の性的人身取引罪で起訴された米ヘッジファンド経営者ジェフリー・エプスティーン被告(66)が10日朝、ニューヨークの拘置所で死亡しているのが発見された。政財界有力者との幅広い交友関係から、公判での証言が注目されていた被告は、自殺によって死亡したとみられている。その状況を疑問視する声が多数上がり、司法省は調査を開始したという。

エプスティーン被告は10日朝、ニューヨーク市のメトロポリタン矯正センターで意識不明になっているのを発見され、間もなく死亡した。同センターは米国内で最も警備が厳重な拘置所のひとつ。

被告は今年7月、未成年者の性的人身取引と共謀の罪で起訴された。罪状を否認し、保釈を認められず勾留されていた。

保釈申請が却下されて間もなく、首に負傷して意識不明になっているのを見つかり、病院に搬送された。拘置所は自殺未遂だった可能性を調べていた。この後、自殺防止のため被告が常時監視下に置かれていたかどうかは、情報が錯綜している。

ニューヨーク連邦地検の訴状によると、被告は2002~2005年、ニューヨーク市マンハッタンとフロリダ州に所有する邸宅に未成年を引き入れていた。被害者は最年少で14歳で、数百ドルと引き換えに性行為を強いられていたという。

被告は以前にも同様の罪で有罪となり、性犯罪者として登録されていた。

亡くなる前日には、被告が関係する他の事件の裁判資料が大量に公表された。その中には英王室のアンドリュー王子が2001年に被告宅で女性の胸に触れたという主張も含まれているが、英王室は2015年の時点でこれを否定していた。

検察はさらに、来年に予定されていた公判を前に、目撃証人となる見通しだった2人に被告が大金を支払ったと指摘していた。

有罪となった場合、最長で禁錮45年の判決を受ける可能性があった。

ニューヨークのビル・デブラシオ市長は、エプスティーン被告の急死について「あまりに都合が良すぎる」と述べ、経緯の徹底調査を求めた。

「彼は何を知っていたのか。我々はそれが知りたい」と、市長は遊説先のアイオワ州で記者団に話した。市長は2020年米大統領選に民主党から出馬している。

「その違法な活動に、ほかに何人の百万長者や億万長者が関わっていたのか。その情報は、ジェフリー・エプスティーンと一緒に死んだわけではない。捜査が必要だ」

「いったいぜんたい、どうして特別保護下に置かれていなかったんだ? いったい何が起きているんだ? 十分な答えが必要だ」

司法省への批判

上院司法委員会の管理・監視・法廷小委員会で委員長を務めるベン・サス上院議員(共和党)は、ウィリアム・バー司法長官に抗議の手紙を送り、「大勢が引責辞任すべきだ」と批判した。

「司法省は職務を果たさなかった。そしてジェフリー・エプスティーンの共謀者たちは今日、最後の最後で素敵な取り引きに恵まれたと思っているだろう」

「司法省の職員は1人残らず、本省職員から夜勤の刑務官に至るまで、この男が自殺する危険性と、彼が抱える暗い秘密は死なせてはならないものだと承知していたはずだ」と、サス議員は書いた。

一方でバー司法長官は、「深刻な疑問が多数あり、答えを見つけなくてならない」とコメントした。さらに、エプスティーン被告の急死の知らせに自分は「愕然(がくぜん)としている」と述べ、司法省として独自調査を開始したと明らかにした。

被害者の反応は

エプスティーン被告から被害を受けたと主張する人たちは、被告が公判で罪を問われる機会がもうなくなったことに落胆したとコメントした。

ジェナリサ・ジョーンズさんは声明を発表し、「あの男がまたしても自分を特別扱いして、楽な道を選んで逃げたかと思うと、とてつもなく腹立たしいし傷ついている」と述べた。

ジェニファー・アラオスさんは米CNBCに、「ジェフリー・エプスティーンはもう、自分が虐待した生存者と法廷で対面しないで済む。私は怒っている」と話した。「私たちはあの男のしたことで傷つき、その傷を一生抱えていかなくてはならないのに」。

被害を主張する女性の一部を担当するリサ・ブルーム弁護士は、引き続き損害賠償を請求していく方針を明らかにした。

「本人が生きて罪を償うのが望ましかったが、管財人を相手にした我々の民事訴訟は継続できる。あの男から一生の損害を受けた被害者たちの、原状回復が必要だ。損害賠償を得る資格がある」と、弁護士はMSNBCに述べた。

ニューヨーク州南地区連邦地検のジェフリー・バーマン検事は、エプスティーン被告の死亡は「気がかりだ」とコメントした。

「被害者が法廷に立って発言する機会が、これで実現困難になってしまった」と検事は声明で述べ、「我々は引き続き皆さんをしっかり支えていくし、捜査は今も継続中だ」と強調した。

エプスティーン被告の罪状は

エプスティーン被告は今年7月6日、フランスから自家用ジェットで帰国した際にニュージャージー州の空港で逮捕された。性的搾取目的の人身取引罪と、性的搾取目的の人身取引共謀罪の疑いが持たれていた。

訴状によると、被告は被害者が18歳未満だと知りながら、性的虐待を加えていた。被害者は裸でマッサージを行うために連れてこられ、その後に性的暴行を受けたという。

また、被告は「被害者に金銭を渡し、同じような行為のために他の少女を連れて来させていた」という。さらに「従業員や同僚」などと共謀し、マンハッタンのマンションやフロリダ州パームビーチの住宅で性的搾取を行う手はずを整えていた疑惑が持たれている。

訴えに対してエプスティーン被告は、呼び寄せた女性は少なくとも18歳以上だったと思っており、性行為も合意の上だったと主張していた。

被告は2008年にも、1999~2007年に何十人もの未成年の少女を性的に暴行した罪に問われたが、司法取引で性的搾取目的の人身取引罪での有罪判決は免れた。その代わり、フロリダ州法に基づき、未成年を売春に勧誘・斡旋(あっせん)したという量刑の比較的軽い罪について有罪を認めた。

人身取引罪では終身刑の可能性もあったが、この裁判では禁錮刑13カ月と性犯罪者登録という判決が出た。

先月の逮捕後、この2008年の司法取引があらためて注目され、強く批判された。その結果、司法取引を取りまとめた連邦検事だったアレックス・アコスタ労働長官が辞任した。

エプスティーン被告の交友関係は

.ニューヨーク出身のエプスティーン被告は、教職を経て金融業界に入った。

逮捕されるまでは、ドナルド・トランプ米大統領やビル・クリントン元大統領、イギリスのアンドリュー王子など、政財界の富裕層や有力者との幅広い交流で有名だった。

クリントン元大統領は7月起訴を受けて声明を発表し、「ひどい犯罪については何も知らない」と述べた。「過去に計4回、ジェフリー・エプスティーン所有の飛行機に乗ったことがあり」、2002年に会ったことがあるという。

一方で、「もう10年以上、彼とは話していない」としている。

トランプ大統領は過去に米誌ニューヨーク・マガジンでエプスティーン被告について、「ジェフのことは15年前から知っている。素晴らしい男だ」と語っている。

また、「一緒にいて楽しい人だ。僕と同じくらい美しい女性が好きらしい。その多くが、どちらかというと若いらしい」とも話していた。

ただし、トランプ氏は後に「12年か15年前に仲たがいした」と言い、7月の起訴後も「ジェフリー・エプスティーンは好きじゃない」と発言していた。

被告の資産規模については諸説ある。ヴァージン諸島に登記されている被告の会社は、財務情報を公表していない。


疑惑の経緯

2002: 今回の起訴内容に含まれる最も早い時点での罪状が起きる

2002年10月: ドナルド・トランプ氏が米誌ニューヨーク・マガジンに対し、エプスティーン被告について、「ジェフのことは15年前から知っている。素晴らしい男だ」と語っている。また、「一緒にいて楽しい人だ。僕と同じくらい美しい女性が好きらしい。その多くが、どちらかというと若いらしい」とも話していた。

2005: 14歳少女がフロリダ州パームビーチの警察に被害を届け出る。最初の捜査が始まる。

2006年5月: エプスティーン被告、未成年者との違法の性行為の罪で起訴。同年中に事件は連邦捜査局(FBI)に移管される。

2007: .フロリダ州連邦地検のアレックス・アコスタ検事が司法取引を取りまとめる。被告は性的人身取引罪で起訴される代わりに、未成年者を含む売春斡旋2件の(人身取引に比べて量刑の軽い)罪状について有罪を認めた。

2008年6月: 被告は禁錮13カ月を言い渡されるが、郡刑務所の特別棟で特別待遇を受ける。また毎週最大で6日間、12時間は仕事のために刑務所からの外出を認められる。一方で、性犯罪者としての登録を科せられる。

2017年4月:大統領となったトランプ氏は、アコスタ氏を労働長官に指名。

2018年11月:米紙マイアミ・ヘラルドが、エプスティーン被告と司法取引の内容、および被害を訴える数十人の女性に取材した調査報道記事を発表。

2019年7月:エプスティーン被告、性的人身取引の疑いで逮捕・起訴本人は罪状を否認。アコスタ長官は辞任。


(英語記事 Jeffrey Epstein: Questions raised over disgraced financer's death