元経済産業省貿易管理部長で、中部大の細川昌彦特任教授は、先行して行われた半導体などの原材料となるフッ化ポリイミドなど3品目の日本への依存度は高いものの、今回の管理強化で対象となるのはごくわずかであると指摘している。細川氏は一例として、「許可の対象は日本供給のレジストのうちたった0・1%で、新製品の試作段階のもの。半導体の量産品に使われるものは許可不要」とツイッターでの投稿やテレビ番組で説明している。

 韓国の半導体産業や国際的なサプライチェーンの脅威になることはあり得ない。もちろん「禁輸」でもなく、全ての品目でいちいち個別許可が必要という話でもない。今回の輸出管理については、一般財団法人安全保障貿易情報貿易センターの解説が参考になる。

 もっとざっくりした言い方をすれば、本当に危ない事例だけを管理したいだけの話である。韓国がテロ支援国家でもなければ、大きな経済問題になりえない水準なのだ。

 いくら文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「北朝鮮びいき」とはいえ、韓国がそのような核兵器開発を極秘裏に進めることもありえないだろう。日本政府があらかじめ懸念しているいくつかの事例さえ払拭(ふっしょく)されればいいだけの話を、自ら日本政府の信頼を損ねる対応を重ねてしまうという政策の失敗により、ホワイト国から外されたわけである。まずは韓国政府が輸出管理の不備を進んで正す、それが最優先の課題なのだ。

 文大統領をはじめとして、韓国側は政治もマスコミも、そして一部の韓国民もみんな、日本の輸出管理問題を同国の経済に甚大な脅威として捉えているが、それは誤りである。ただ韓国政府関係者は、十分にこのことを理解しているに違いない。

 むしろ文政権は、同国の経済的な困窮を日本の責任に転嫁する機会として捉えている可能性が大きい。実際に、輸出管理問題が生じてから、文政権の支持率は上昇して人気回復に貢献している。

 さらに注目すべきは、日本と韓国の間での紛争事項である元徴用工問題やレーダー照射事件、慰安婦問題における「ちゃぶ台返し」などについて、日本側は今後、事態によっては報復措置も辞さない構えであることだ。

 韓国政府は、もちろん報復措置の可能性を十分に認識しているだろう。そのため、韓国経済に与える影響が少ない輸出管理問題を大げさに取り上げ、日本製品不買運動など韓国民をあおることに加担し、日本による「本当の報復措置」を大きくけん制しようとしているのかもしれない。「輸出管理でも、われらはこれだけ反発しているので、日本側が本当に報復措置をするなら覚悟したほうがいい」とでもいうように、国を挙げて「けん制」しているかのようだ。
2019年8月12日、ソウルの大統領府で開かれた会議に出席した文在寅大統領(韓国大統領府提供・共同)
2019年8月12日、ソウルの大統領府で開かれた会議に出席した文在寅大統領(韓国大統領府提供・共同)
 日本政府はこのような韓国政府の脅しに屈することがないようにお願いしたい。ここで安易な妥協をすることは、韓国政府が長年続けている、国内の苦境を日本の責任に転じる政策を止めることはないだろう。

 日本は韓国の都合のいい欲求不満のはけ口ではない。韓国の「幼稚な対日政策」を完全に転換させるためには、日本政府は国際ルールに沿いつつ、国際世論の闘いに負けることなく、その姿勢を強固なものにする必要がある。