一色正春(元海上保安官)

 令和元年8月2日、わが国政府は韓国を輸出管理において優遇措置を受けることのできる優遇対象国(ホワイト国)から除外する閣議決定を行い、同月28日にその政令が施行されます。 

 これは同年7月4日に半導体の生産に必要なフッ化ポリイミド、レジスト、エッチングガス(フッ化水素)の3つの化学製品(以下、3品目)を原則3年間は個別に許可が要らない包括許可品目のリストから除外したことに続く韓国に対する輸出管理の見直し措置です。

 ただし、この2つの措置の大元は同じものであり、時期がずれるのは根拠が通達であるか政令であるかの違いで(政令は通達に比べると手続きに時間がかかる)、巷(ちまた)で言われている制裁措置が一歩進んだという性質のものではありません。

 これを受けて大半のマスコミは輸出規制という「禁輸」を連想させる単語を使って、さもわが国が韓国に対して輸出を行わないかのような報道を行い、それを受けて野党や現政権に批判的な方々は一様に今回の措置を非難しています。

 一方で現政権に好意的な人たちは「よくやった」「戦後、初めて韓国に対して明確に国家の意思を示した」と好意的にとらえているようです。しかし、これはそんなに単純な話なのでしょうか。

 詳細は後述することとして、まずは客観的な事実をまとめてみましょう。

・韓国がホワイト国に指定されたのは2004年(小泉内閣)
・日本がホワイト国に指定しているのは韓国を含む27カ国
・そのうちアジアでは韓国のみ
・EUは韓国をホワイト国に指定していない
・本来、輸出は契約ごとに個別の許可が必要である
・ホワイト国とは、これを簡略化し、一度許可を得れば3年間有効となる
・ホワイト国指定を継続するには厳格な輸出管理が行われているか否かを確認するための協議が必要
・西村康稔官房副長官は日本と韓国との間で「少なくとも3年以上の間、十分な意思疎通、意見交換が行われていない」と記者会見で述べた。
・3品目は大量破壊兵器等に転用される恐れがある
・韓国産業通商資源省は2015年から19年3月にかけて大量破壊兵器に転用可能な戦略物資の不正輸出を156件摘発したと発表

 これらのことを普通に読めば、韓国がわが国に対して行っている「不当な輸出規制」という批判は当たらないことが分かります。そもそもの原因は3年間、韓国がわが国からの協議に応じてこなかったことにあり、しかも2004年以前の状態に戻しただけで、他のアジア諸国と同様の待遇です。これで世界貿易機関(WTO)に提訴可能であれば、わが国は他のアジア諸国からも訴えられかねません。もっと言えば韓国は日本だけではなく、EUも訴えるのでしょうか。
日本政府が「ホワイト国」から韓国を除外する政令改正を閣議決定したことを報じるソウル駅のテレビ=2019年8月2日(共同)
日本政府が「ホワイト国」から韓国を除外する政令改正を閣議決定したことを報じるソウル駅のテレビ=2019年8月2日(共同)
 そもそも外交問題という難しい話以前に、「優遇」ということの性質上、するかしないかは、するほうが勝手に決めていいものではないでしょうか。人間関係に置き換えてみれば、異性に対して「自分を好きになれ」と言っているようなもので、よく臆面(おくめん)もなく言えるものだと思います。

 おまけに8月初旬、タイで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会議の場で、韓国の外相は、もともと日本から優遇措置を受けていないアジア諸国の代表に対して「日本が韓国に対して不当な経済報復措置を行っている」と訴えたようですが、それを言われた相手がどう思うのかということすら想像できないのでしょうか。