2019年08月16日 9:54 公開

英領ジブラルタルは15日、7月4日に拿捕(だほ)したイランの石油タンカー「グレース1」を解放した。グレース1の解放についてはアメリカ当局が最後まで反対していたものの、イラン当局は、積荷をシリアで降ろさないという約束を書面で提出した。

グレース1は、欧州連合(EU)が制裁を課しているシリアにイランの原油を運んでいる疑いで拿捕された。イギリスの外務・英連邦省は、シリア政権が「国民に対して化学兵器を使った」と批判している。

アメリカ政府が昨年、イランとの核合意から離脱し対イラン制裁を強化して以降、イランと米英の間では緊張が高まっている。

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グレース1は15日朝の時点でジブラルタル沖に停泊していたが、ロイター通信が取材した目撃者によると、船首の向きが少なくとも180度変わっていたという。

これが潮の流れのせいか、出航の準備のためかは定かではない。

ジブラルタルのアントニー・ダドリー首席判事は、この件に関してアメリカの訴状を受理していないと述べた。

また、ジブラルタル政府のフェイビアン・ピカード首席閣僚はグレース1が「解放された」と認めたうえで、アメリカの司法省が「船舶の引きとめについて新しい法的手続きを開始するべきだ」と要請してきたと説明した。

その上で、「これは独立した刑事共助条約当局の管轄で、この要請に対する客観的な法的判断を行う」と回答した。

イランのジャヴァド・ザリフ外相は、ツイッターで、「がん患者から医薬品を奪うなどの経済テロで目的を達成できなかった後、アメリカは司法システムを乱用し、公海でイランの資産を盗もうとした。この海賊行為未遂は、トランプ政権が法を軽視していることの表れだ」と述べ、アメリカの妨害を批判した。

https://twitter.com/JZarif/status/1162014558577483778


「ステナ・インペロ」はどうなる?

グレース1の拿捕から数週間後、イランは中東のホルムズ海峡でイギリス船籍の石油タンカー「ステナ・インペロ」を拿捕した。

イラン当局は、ステナ・インペロが「国際海事法に違反した」としてバンダル・アッバス港に係留している。イギリス政府は、この拘束は「国家による海賊行為だ」と批判した。

ステナ・インペロには、インド人、ロシア人、ラトヴィア人、フィリピン人の計23人が乗船している。イラン当局は7月、乗組員の取り調べの様子などを写真で公開した。

一方、グレース1には28人が乗っており、その大半はインド人だという。

ホルムズ海峡での緊張

核合意をめぐる米・イランの緊張は、海運の要衝のホルムズ海峡にも飛び火しており、イギリスも巻き込んで緊張が高まっている。

アメリカとイランの間では18日、米政府がホルムズ海峡で米海軍艦艇に接近したイランのドローン(小型無人機)を撃墜したと明らかにした。トランプ大統領によると、ドローンが米海軍の強襲揚陸艦「USSボクサー」に914メートル強の距離まで接近したため、「防衛措置を講じた」という。

一方でイラン側は、このドローン撃墜に関する情報はないと反論している。

6月にはイラン革命防衛隊(IRGC)がイラン上空で、アメリカの偵察ドローンを撃墜した。これについてイランは、米軍がイラン領空を侵犯したと主張している。

5月には、アラブ首長国連邦(UAE)沖で、サウジアラビアの石油タンカー4隻が攻撃される事件が発生。アメリカはイランの関連を指摘しているが、イランはこれを否定している。

(英語記事 Gibraltar releases Iranian oil tanker