そして、大衆を演説で動かすという能力は、田中角栄元首相も小泉純一郎元首相も群を抜いているが、真紀子氏も進次郎氏も父に似て、演説がうまい。人を引きつける漫談能力に長(た)けている。だから「人寄せパンダ」という。

 私は政治家として、街頭演説を最大の集票手段として使い、演説能力には多少の自信はあったが、現役時代に自分が敵わないと思った演説上手は純一郎氏と真紀子氏だけである。進次郎氏については、まだ及第点はあげられないが、並の政治家よりもTPOを考えた演説はできていると思う。

 問題は、演説の中身である。素晴らしい政策の発表があるわけでもないし、大衆受けする激烈な言葉とジョークを並べるだけで、中身がない。

 国の根幹である外交防衛、財政政策、経済政策、憲法改正などについて、具体的にどのような政策を持ち合わせているのか分からない。何か言っているのだろうが、中身が空虚なので印象に残らない。

 角栄氏には、列島改造論などの政策があり、純一郎氏にも構造改革や郵政民営化といった政策があった。一方、真紀子氏は外相ではあったが、どのように日本外交をかじ取りしたかは普通の日本人の記憶に残っていないし、そもそも彼女に外交政策があったのかどうかさえ疑わしい。進次郎氏に至っては、政策らしきものはまだない。

 これから、あらゆる分野について政策をもっと勉強する必要がある。特に、宰相になるには、外交や安全保障について広範な知識が要る。
日中国交正常化20周年で中国側の招待を受け、中国へ出発するため目白台の自宅を出る田中角栄元首相(右)と娘の田中真紀子氏=1992年8月27日
日中国交正常化20周年で中国側の招待を受け、中国へ出発するため目白台の自宅を出る田中角栄元首相(右)と娘の田中真紀子氏=1992年8月27日
 本もよく読んでほしい。自民党の石破茂元幹事長は「防衛オタク」と言われたが、農業などにも精通しているし、何よりも読書家である。耳学問だけではなく、さまざまな論者による本や論文を読むべきである。

 経済などは、基本的な学識を身につけていないと、例えばアベノミクスについて擁護も反論もできない。最近の予算委員会の議論を聴いていると、勉強不足で知的水準の低い国会議員が多すぎる。特に若い議員がそうである。