田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 お盆休みの日本列島の注目を集めた事件は、茨城県の常磐自動車道で起きた「あおり運転暴行事件」だろう。若い男性が運転する乗用車に対して、白いSUV(スポーツタイプ多目的車)タイプの高級外車が過剰なあおり運転を繰り返したドライブレコーダーの映像が、SNS(会員制交流サイト)などで拡散した。

 しまいには、男性の車の前に入るなどして停止させたそのSUVから男女2人が出てきて、中年の男の方が、若い男性に暴行を加えた。その一部始終は録画され、その日のニュースやインターネットで大きな反響を招いた。

 あおり運転のうえに暴行した中年の男は数日後、傷害の疑いで全国に指名手配され、やがて大阪市内で逮捕された。この逮捕時の様子も近くの住民によって動画で収録されて、SNSやテレビなどで多くの国民が目にすることになった。

 筆者も仕事で高速道路を利用することがよくある。自分で運転する場合もあるが、ラジオやテレビに出演するときは、タクシーに身を任せることも多い。

 日常的に高速で運転していると気が付くことは、普段はあおり運転をあまり経験しないことだ。無茶な運転をする人はそれほどおらず、特に平日は日ごろ高速を利用している人が多いのか、流れがスムーズで、互いに無理をしない印象が強い。

 今までも高速で運転していて、幅寄せや急激なブレーキ、パッシングなどを受けることは、それほど多くはなかった。単に運がいいだけなのかもしれないが、日本の実態調査を確認すると、高速で起きているあおり運転は全体の1割ほどで、それほど多くない。このような個人的経験もあって、今回の事件は極めて衝撃的だった。
帰省ラッシュで下り線が渋滞する神奈川・海老名SA付近の東名高速道路=2019年8月11日午前(共同通信社ヘリから)
帰省ラッシュで下り線が渋滞する神奈川・海老名SA付近の東名高速道路=2019年8月11日午前(共同通信社ヘリから)
 警視庁交通局交通指導課の矢武陽子氏が、ここ最近のあおり運転を統計的にまとめている(「日本におけるあおり運転の事例調査」2019年)。この調査は限られた期間と事例ではあったが、いくつか興味深い点が見て取れる。

 まず、あおり運転の加害者は、同調査の対象期間中は全て男性であり、被害者もまた大半が男性であった。加害者の年齢では、30代が最も多く、50代にも2番目のピークが存在する。被害者は40代が最も多い。