2019年08月19日 12:26 公開

アントニオ・バスコさんは、妻の葬儀には誰も参列しないものと諦めていた。8月3日午前に米テキサス州エルパソの小売店ウォルマートが銃撃犯に襲われ、22人が死亡した事件で、バスコさんはマージー・レッカードさん(63)を失った。しかし、バスコさんによると近隣に身寄りは少なく、がらんとした教会で妻を見送ることになるのかと思われた。

そこでバスコさんは、知り合いでなくても誰でも参列してほしいと呼びかけた。それでも、教会の前に行列ができているのを見て、バスコさんは「すごい」と衝撃を受けていた。

生前に会ったことのないレッカードさんを弔うために集まった約700人の列は、教会をぐるりと囲んで、さらに別の道へと続いた。

あまりに大勢が集まったため、葬儀会社は葬儀の会場を変更して対応した。それでも教会の中は満席で、さらに大勢が立って参列し、教会の外で行列した。

集まった人たちはレッカードさんのために歌い、マリアッチ・バンドがメキシコ音楽を演奏した。

米紙ニューヨーク・タイムズによると、1万通以上の弔電や約900個の供花が寄せられた。オハイオ州デイトンからの供花もあったという。デイトンでは、エルパソの事件から24時間とたたない4日未明に起きた乱射事件で、9人が死亡している。

CNNによると、日本からの供花もあったという。

カリフォルニア州サンフランシスコから弔問に訪れたハラ・ヒジャジさんは、たった1人の家族を失ったバスコさんについてニュースで知り、いてもたってもいられなくなったという。

「あまりに心打たれて、魂を貫かれて、エルパソへのフライトを予約していました。アメリカが痛み苦しんでいるときは、全員が痛み苦しんでいるんだと示す必要があります」

レッカードさんと元夫の間の息子、ディーン・レッカードさんは「母は、肌の色や宗教や政治を問わず、誰でも愛していました」と話した。

「どこを見ても花でいっぱいで。こんなにたくさんの花を見るのは初めてかもしれない」

孫のタイラーさんは、「色々な街から色々な信仰を持つ人が集まってくれました。これほどの愛情と応援を示してもらえるなんて、すごいことです」と話した。

バスコさんとレッカードさんは22年前、ネブラスカ州のバーで出会い、やがてエルパソに移り住んだ。国内を長距離列車で旅行して回るのが、2人の共通の楽しみだった。

自分たちの人生は「まるで、おとぎばなし」だったとバスコさんは、ニューヨーク・タイムズに話した。「彼女は貴婦人で、最愛の人だった」。

葬儀会社は、バスコさんの事情を知り、葬儀費用を全額負担することにしたとBBCに明らかにした。身寄りが少ないならばフェイスブックで市民を招いてはどうかと提案した葬儀会社のハリソン・B・ジョンソンさんは、「告知を投稿して依頼、大勢の人が温かい気持ちを寄せてくれた」と言い、「悲劇に打ちのめされたこのコミュニティーの重荷を少しでも軽くするため、ささやかながら協力できるのは光栄です」と話した。

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(英語記事 El Paso shooting: Man shocked as hundreds attend wife's funeral