トランプ大統領の「文化防衛論」
 2018年6月中旬よりメキシコ国境での不法移民親子の引き離しが米国で問題化した。この問題を考えている内にトランプ政権を成立させた思想と三島由紀夫の「文化防衛論」との共通性に気付いた。つまり精神的、文化的“共同体”の防衛である。

 この「親子引き離し」問題に関しては、トランプ政権の不寛容政策のために極端になっている部分は否定できないが、不法移民の親が裁判中は子供を米国保健福祉省が預かるというのは、クリントン、オバマ政権が決めたものである。2018年は極端な状態が起きて政治問題化したため、トランプ大統領は応急処置の一環として、不法移民親子を軍事基地に収容するように命じた。これも実はオバマ政権でも1回は行われた政策なのだが、その時の収容人数は7000人だった。2018年は2万人以上の収容が必要だという。つまりオバマ時代における最悪の年の3倍もの不法移民が、米国に殺到したのである。

 これは白人プロテスタントの共同体としての米国の危機と言わねばならない。実際、米国の保守派の間では、カトリック教団が「親子引き離し」問題等に批判的なのは、カトリック系が多い南米系移民を増やすことで、米国でのカトリックの影響力を増そうとする陰謀との意見が広まっている。そのためかトランプ大統領の前戦略顧問のバノン氏が、彼自身カトリック教徒にも関わらず、保守派枢機卿等と協力してフランシスコ教皇を退位に追い込もうとしているという噂も流れている。

 これは『英霊の声』で三島由紀夫が、左翼以上に厳しい昭和天皇批判を行ったことを思わせる。他にもフランシスコ教皇はLGBTに寛容な発言を行う等、宗教者失格である。バノン氏を応援したい。

 ただ、カトリックだけではなく、共和党支持の宗教保守派の一部にも、「親子引き離し」には批判的な宗教者がいるという。宗教といえども精神的、文化的“共同体”の同一性が保たれて初めて成立する。宗教だけではない。人権も同様である。国連人権理事会が同問題に関して批判した翌日、米国は同理事会を脱退している。表面上はパレスティナ問題が主要因であるが…。

スティーブン・バノン氏=2017年12月(宮崎瑞穂撮影)
スティーブン・バノン氏
=2017年12月(宮崎瑞穂撮影)
 人権も理性主義の見地から精神的、文化的“共同体”を破壊するものになっているのではないか?人権も精神的、文化的“共同体”同一性保持の範囲内でのみ成立すると考えるべきだろう。また国際機関等も、グローバル化や理性主義の見地から、精神的、文化的“共同体”を破壊するものになっている。日本も国連人権理事会等を、脱退するくらいで良いだろう。

 米国の国連人権理事会脱退から数日後、難民に寛容だったEUも、政策転換を表明。世界は国際主義的見地による移民、難民に寛容な方向から、精神的、文化的“共同体”防衛論の方向にシフトしつつある。この流れを日本人も理解し促進しなければならない。安易な人権主義的見地から移民、難民の保護等を考えるべきではない。突き放す良い意味の冷酷さを、日本人も身に着けるべき時だろう。

よしかわ・けいいち 政策コンサルティング事務所「グローバル・イッシューズ総合研究所」代表。2016年まで米国ワシントンDCにも拠点を持ち、東日本大震災を契機に一般社団法人日本安全保障・危機管理学会防災(JSSC)ワシントン事務所長として、日本に米国と同様の危機管理専門省庁の立ち上げを目指す政策提言活動に取り組む。2017年以降は日本国内をベースに、テロ対策や米国政治に関する政策提言活動を続ける。著書に『911から311へ—日本版国土安全保障省設立の提言』『東京オリンピック・パラリンピックは、テロ対策のレガシーになるか?』(近代消防新書)など多数。