吉川圭一(グローバル・イッシューズ総合研究所代表)

(近代消防社『救世主トランプ―“世界の終末”は起こるか?』より)

 日本も巻き込まれる危機が2020年頃に起こるとしたら、それは中東ではないかも知れない。南シナ海かも知れない。National Interestが2018年10月1日に配信した“Here's America's New Plan to Stop China's Island-Building”によれば、米国は8月に成立した新国防権限法(NDAA)の1262節の中で、中国の南シナ海情勢に対して重大な懸念を表明している。

 同記事によれば中国は2014年に人工島を建設すると、直ぐにレーダー、滑走路、ミサイル収納庫を建設。2018年5月に南沙諸島に対艦ミサイルと対空ミサイルを配備。同時に長距離爆撃機の離発着を行った。そこで米国はリムパックに中国を招待することを停止。これをNDAAでは“First Response”と記述している。そして米海軍はNDAA1262節に基づいて世論喚起のために、メディア関係者の潜水艦同乗を許したり、異常接近等の状況の様子を、YouTubeで流したりしている。

 またワシントン・タイムズが11月14日に配信した“Trump demands China remove missiles in the South China Sea”によれば、11月8日に行われた米中戦略対話で、マティス国防長官とポンペオ国務長官は、中国に対し南シナ海に配備した対空、対艦ミサイルを全て撤去するように要求したという。

 米国も南シナ海情勢に関しては、次第に本気になって来ている。私は繰り返し中国が南シナ海に拘っているのは、東シナ海等に比べれば相対的に水深の深い南シナ海を内海化し、そこに潜ませた潜水艦からの水中発射の核ミサイルで、米国本土を脅かすことで、米国との核戦争になった場合、有効な第二撃を確保することによって、米国に対し対等に近い立場を確立し、世界の支配権を奪取することこそが、真の目的であると述べて来た。それを米国が許すだろうか?

 もちろん南シナ海を抑えれば西太平洋のシーレーンを抑えることもできる。これも“海を支配しているからこそ世界の支配者である”という意識が非常に強い米国が許すことではない。
南シナ海に展開する米空母ロナルド・レーガン(米海軍提供)
南シナ海に展開する米空母ロナルド・レーガン(米海軍提供)
 中国の潜水艦発射核ミサイルが技術的に可能になるのは、2020年と2024年の間くらい。つまりトランプ政権が2期続くとしたら、2期目くらいになることは確かなようだ。

 だが、それから中国の南シナ海進出に対応するのでは、米国は間に合うだろうか? それ以前に何とかしようとするのではないか? それが米国のINF全廃条約離脱の原因ではないか? そもそもINF全廃条約は、冷戦後期に当時のソ連がSS20という中距離核ミサイルを配備して、西ヨーロッパが危険に晒されたため、米国も西ヨーロッパにパーシング2という中距離核ミサイルを配備した。それはソ連本土に米国から発射されるICBMの数倍の速さで到達する。つまりソ連の報復攻撃の余地が激減する。そうして高まった緊張を背景に、ソ連も折れて来て、当時の米ソが、お互に中距離核ミサイルの全廃を誓ったのが、INF全廃条約だった。

 それが米ソ冷戦終結の、端緒になったことは否定できない。しかし時代は変わった。