National Interestが10月22日に配信した“Why America Leaving the INF Treaty is Chinas' New Nightmare”によれば、2008年にプーチン大統領は、この条約に中国が入っていないため、中国が中距離核を配備し始めたとして、この条約に違反する中距離核ミサイルを配備し始めた。

 そのことは遅くとも2014年に、米国オバマ政権も確認している。にも関わらずオバマ政権は、例により世界のインテリ向けのポーズで、2013年に潜水艦発射核ミサイルを、INF全廃条約と無関係にも関わらず、大幅削減してしまった。確かに潜水艦発射核ミサイルは、射程距離の関係で地上発射INFに近い。そのため潜水艦発射核ミサイルを大量に持っていた米国は、既にINF全廃条約に縛られていなかったという意見もある。

 しかし潜水艦発射核ミサイルは、命中精度等の問題で、地上発射のINFより劣る。その理由と、さらに敵の先制攻撃に対し、地上発射核ミサイルより安全なことから、潜水艦発射核ミサイルは、地上発射核ミサイルによる攻撃で相互に甚大な被害を被った後に、第二次攻撃を行うことが目的である。

 そのため潜水艦発射核ミサイルは、先制攻撃の脅威で相手に戦争を起こさせない効果は、十分とは言えない。あくまで第二撃を確保することで、自衛的に(?)核の対等性を確立するのみである。また攻撃を行えば、位置を特定され敵国の海空軍に撃沈される。そのような“脆弱性”も、潜水艦発射核ミサイルにはある。

 これは米中共に同じである。先制攻撃の脅威で相手に戦争を起こさせない効果が高いのは、安定した地上発射核ミサイルなのである。そこで米国は、INF全廃条約から離脱したのではないか?南シナ海での中国の人工島等を米国が攻撃したら、中国のICBMで米国の大都市等が攻撃される。中国の保有するICBMは公称で100発程であるが、1,000発以上保有しているという情報もある。

 何れにしても米国の大都市が幾つか中国のICBMで破壊されて、数千万人の死者が出ただけで、米国は経済的に破綻する。それに対して中国は、米国の報復攻撃で1億人が死亡しても、過剰人口の整理になり望ましいという考え方もある。

 また、いま米中経済は、サプライ・チェーンで密接に関係している。大規模な戦争を行えば、相互に被害が大きい。特にハイテク関係製品の組み立て等を中国大陸で行っている米国にとっては…。そこで軍事専門家の間では、“米中戦争は起こらない”というのが多数意見ではある。しかし今まで述べてきたように、南シナ海での緊張は明らかに高まってもいる。
太平洋に展開する米第7艦隊の空母打撃群=2016年6月(米海軍提供)
太平洋に展開する米第7艦隊の空母打撃群=2016年6月(米海軍提供)
 例えばサプライ・チェーンの問題にしても、トランプ政権の関税政策のために、米国企業も中国からの撤退を検討し始めている。例えばFinancial Timesが12月3日に配信した“Trump's trade war:which of China's neighbours are set to profit?”では、南部中国アメリカ商工会が調査したところ、米国の中国からの輸入関税が高過ぎるため、219社の内70%が、生産拠点を中国外に移転させることを検討している。米国の関税政策も中国との戦争が可能な状況を作ろうとしているとも見られる。

 逆に南シナ海を射程に入れる中国南部にも、中国は中距離ミサイルを、やはり500発以上、保有している。それも南シナ海周辺での局地戦の形ででも、米国に勝てる体制を作っていると考えられる。