そこで米国がINFを保有する意味が出て来る。南シナ海を射程に入れる中距離ミサイルが配備された中国南部を狙うことが出来る場所に米国のINFが配備されれば、もし南シナ海の人工島等を米国が攻撃したりしたとしても、中国は報復核攻撃が難しい。そこにある中距離ミサイルが破壊されるだけではない。

 そのような位置にある米国のINFは、中国の重要地帯にも届くのである! その到達時間は短く、中国が米国をICBMで脅かしたとしても、このINFの方が早く到達するため、米国を中国は核で脅かすことは難しくなる。前述のように潜水艦発射の核ミサイルは、報復攻撃には使えるものの、安定性等の点で十分ではない。また前述のように攻撃を行えば、位置を特定されて撃沈される。

 INFが中国を射程内に入れて展開されれば、米国に対する中国の優位は成り立たなくなる。そこでボルトンNSC担当大統領補佐官はロシア側に、中国の中距離核戦力はロシアにも脅威となっていると、ロシアが米国と共に、中国の中距離核戦力の脅威封じ込めのため、軍備管理交渉に中国を加えるようロシア側に呼びかけている。それが上手く行かなければ、中国南部を射程に入れる地域への米国のINF配備という結果になる。具体的には台湾やインドの東岸沖の島等が有力な候補地だろう。

 またNational Interestが10月22日に配信した前掲記事では、まず巡航ミサイルその後に弾道ミサイルを配備する方式で、北日本、グアム、南フィリピン、北オーストラリアも重要な候補地だという。これにより、いわゆる“第一列島線”の内側の海を、中国に自由にさせないことが出来ると同記事は主張している。(注:2019年2月、米国が日本を含む、これらの地域に、まず核を搭載しない中距離弾道ミサイルの配備を始めるという情報が、流れ始めた)このようなシステムが一部でも配備されたとしたら、それは南シナ海戦争――少なくとも人工島の破壊と、それに対抗する中国による米艦船への攻撃等が、近い可能性が低くない。中国も重要地帯への先制核攻撃の恐怖から、地上発射の核ミサイルは使えない。

 あるいは人工島解体と中距離ミサイルの撤廃ないし配備中止を巡って、米国と中国が交渉に入るかも知れない。1980年代の米ソが、核兵器等の軍縮に入って行ったように…。あるいはキューバ危機の時のように…。偶発的に大規模な核戦争に発展しないと、今度は断言できないかもしれないが…。特に中国が潜水艦発射核ミサイルを完成させる2020年代以前に、何らかの意味での西太平洋地域へのINF配備が実現したら、それが要注意のタイミングだろう。

 National Interestが10月14日に配信した“How to Goad China into a War in the South China Sea”によれば、2020年に米国は、今までにない大規模なリムパックを、南シナ海で行う予定である。それに米国は中国を参加させない方針である。そこで中国を敵に回すのが怖い東南アジア諸国の中には、そのリムパックに参加しない国も出て来ると思う。しかし“中国封じ込め”のために参加する国もあるに違いない。
G20に出席するため来日した習近平国家主席=2019年6月、大阪空港(代表撮影)
G20に出席するため来日した習近平国家主席=2019年6月、大阪空港(代表撮影)
 このタイミングで前述のような場所に米国のINFないし中距離弾道ミサイルが配備されるとしたら…。そして2020年の大統領選挙で、トランプ氏が劣勢に立たされたとしたら…。そして、その時に中東大戦が起きる状況でなかったとしたら…。その時が南シナ海戦争が、最も起こり易いタイミングだろう。われわれ日本人も、準備をして置かなければいけない。

 例えば水中発射ミサイルを発射可能な潜水艦を保有しておくとか…。実は日本は、それを実現できる技術力はあるのである。更にNewsweekが11月15日に配信した“U.S.‘COULDLOSE' ITS NEXT WAR:REPORT SHOWS MILITARY WOULD‘STRUGGLE TO WIN' AGAINST RUSSIA AND CHINA”によれば、米国の軍事力は相対的に落ちて来ていて、少なくとも中露両国を相手にした“二正面作戦”に勝つ可能性は、極めて低いという。特にハイテク兵器分野での開発競争の遅れが深刻であるという。

 その分野でも日本は、米国を助けられる力は、まだまだある。例えば日本の自動車会社の電気自動車のシステムは、敵のハイテク・システムを麻痺させる電磁波の発生装置としても、米国製のものより優れているという説もある。また前にも書いたように米国は、このような劣勢を挽回するため、宇宙軍を創設しようとしているが、これもロケットや衛星の誘導システムの一部では、日本が米国より良い技術を持っているという。米国宇宙軍創設にも日本は、可能な限り積極的に協力すべきだと思う。そして米国が宇宙軍を創設するタイム・リミットも、やはり2020年であることは要注意である。