それが、3カ月おきに税務署に出掛け、売り上げや消費税の計算をしなければならなくなった。しかも、付加価値税により景気が悪化し、売り上げも激減した。その怒りが反政府デモ支援に向けられた。

 つまり韓元首相は、付加価値税への怒りが大統領暗殺の引き金を引いたのだと語る。さらに、「『消費税はアジアでは指導者を殺すが、財政を立て直す』というのが歴史の教訓だ」とも述べた。

 日本でもこの教訓は当たっている。消費税を導入したり、税率を引き上げた政治家はことごとく政治力を失ったからだ。

 では、なぜ消費税は指導者の「政治生命」を奪うのか。今春、改めて問うた私に、韓元首相は「消費税は金持ち優遇の不公平税であり、貧困層の不満が高まる。実際、韓国では民主抗戦に発展した」と答えた。

 これを避けるためには、直接税(所得税)と間接税(消費税)の比率是正が必要だ。韓国は所得税を引き下げ、低所得層への配慮から未加工の食料品には消費税をかけなかった。

 そういえば、夏休みにニューヨークに遊びに行ったゼミの卒業生が「ニューヨークの消費税は貧乏人に優しい」と報告してきたことを思い出す。ニューヨークでは、衣類や靴は1品110ドル(約1万1500円)以下であれば、消費税が免除され、日用品の食料や薬に至っては消費税を払う必要がないという。

 韓国政府は貧困層に気を使ったが、日本はその配慮が少ない上、複雑な手続きのせいで、反発が政治指導者に向かうため、政権の支持率が下がる、と韓元首相は憂慮する。「10%は消費者に相当に重い負担を感じさせる。わずか2%の引き上げと考えているようなら、大変なことになる」
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
 先の参院選では「消費税廃止」を訴えた政治団体の候補者が当選し、法律上の政党要件を満たした。この躍進ぶりからも分かるように、主要野党はせめて「10%引き上げと引き換えに、食料品と衣料品の無税」を主張する駆け引きさえできなかったのか。

 これでは、低所得層に対する愛情も政策もなかった、というしかない。「その分の財源をどうする」などと反論しているようでは、政府・与党と何ら変わりがない。国民目線がなければ、選挙に勝てるわけがない。