なぜ、消費税が政治指導者を「暗殺」することになるのか。韓元首相は「欧米人は税を『義務』と受け止めるが、アジアでは『収奪』と考えるからだ」と指摘する。韓国の付加価値税導入は日本の消費税より約12年も早かっただけでなく、施行前に2年かけて世界中を調査し、国内で事前の「試験実施」まで行う念の入れようだった。

 こうして、韓国は導入当初から「消費税を10%以上にしない。10%が一番効率いい」と判断し、加工されていない食料品などは無税にした上で、低所得者への減税といった配慮もした。

 それでも暴動は避けられなかったのである。だが、韓元首相には、付加価値への課税が20世紀後半の先端税制になるとの判断があった。果たして導入により、韓国の財政は飛躍的に改善した。

 韓元首相は、日本で「将来は15%から20%の消費増税という声もあるが、あまりにも無謀だ」と述べた。欧米では可能であっても、アジアでは「暴動」になって、自民党政権が崩壊するというのだ。ただ、「自民党をぶっ壊す」財務省の戦略なら理解できる、とも付け加えた。

 日本の消費税や韓国の付加価値税は税率10%なら、理論的には国内総生産(GDP)の10%の税収(日本では約50兆円)を生む。GDPは付加価値の総額だからだ。ところが、日本の消費税では、10%課税しても5%の税収しかあげられない。これが政策の誤りで、日本は韓国の経験に学ばなかったのである。

 与野党による消費税の国会論戦は、低所得者対策や直間比率の見直し、国民生活への影響など、消費税に対する基本的な論点を欠いた。与野党ともに国民のことを考えるよりも、財政当局の手先に成り下がっているのではないかと思わせる。まさに「消費税10%は財務省による安倍政権潰しの陰謀」と言われる理由である。野党もこの「悪だくみ」に協力しているのか。
2018年12月、経済財政諮問会議で消費税増税への対応を指示する安倍首相=首相官邸
2018年12月、経済財政諮問会議で消費税増税への対応を指示する安倍首相=首相官邸
 韓元首相は、トランプ大統領との信頼関係を普通の政治指導者にはできない能力であると、安倍首相を評した。また、良好な日米関係のおかげで、経済政策に成功した日本は幸運であり、景気を引き上げた安倍首相の経済政策は高く評価できるとも述べている。

 その韓国の名財政家が、10月からの消費税引き上げにより、日本の庶民が「10%の重税を肌で感じるだろう」と繰り返し指摘し、不幸な事態を招くのではないかと憂慮した意味は重い。