2019年08月30日 14:31 公開

米連邦捜査局(FBI)のジェイムズ・コーミー前長官がドナルド・トランプ米大統領に解任された後、任期中に大統領との会話内容を書き留めていたメモを公表したことについて、米司法省は29日、コーミー氏を起訴はしないものの、その行動を批判する報告書を発表した。

米司法省監察総監室は、コーミー氏によるトランプ大統領との会話記録の公表について調査した結果を公表し、機密情報の取り扱いにおいて職務にもとる行動をとったと批判した。その一方で、起訴には当たらないという判断を示した。

コーミー氏は2017年5月にトランプ氏に電撃解任されて以来、トランプ氏を声高に批判し続けている。

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司法省監察総監の判定

監察総監室(OIG)の報告によると、コーミー氏は解任後、FBI長官としてトランプ大統領と2人で話した会話内容を一部、公表した。自分の顧問弁護士で友人のダン・リッチマン氏に会話内容を書き留めたメモの一部を渡し、それを米紙ニューヨーク・タイムズの記者に提供することを許可した。

OIG報告は、「現職あるいは元職のFBI職員が前長官の行動を手本にし、自分個人の強い信念のために機密情報を公表するようなことをしたなら、FBIは法執行機関としての職務を適正に遂行できなくなる」と批判した。

報告書によるとさらに、コーミー氏は大統領との会話のメモを自宅の金庫に保管しながら、FBIにその旨を報告しなかったため、司法省方針に違反した。

監察総監は、コーミー氏が大統領との会話内容を公表したのは、司法省が大統領への捜査に着手するよう圧力をかけたかったからだと指摘した。

「特別検察官の任命が公表の目的だったと、(コーミー氏は)我々に説明した。特別検察官の任命を主張するならば、ほかに合法的な選択肢はいくつかあった」、「その一方で、FBI在職中に入手した機密捜査情報を、個人的に望ましい結果を実現するため、勝手に公表するのは、許されていなかった」と、監察総監はコーミー氏を批判している。

コーミー氏の反応は

こうした内容にもかかわず、コーミー氏はツイッターで、自分の言い分が認められたと書いた。

「2年の間、私について『刑務所行きだ』とか『うそつきのリーク野郎』などと言い続けた全員へ。あなた方に質の悪い情報をずっと提供し続けた相手を、大統領を含めて、どうして今でも信用しているのか、自問自答するといい」

「司法省監察総監は、『コーミーや担当弁護士たちが、メモに含まれた機密情報をマスコミ関係者に提供したという証拠をまったく見つけなかった』と言っている。私の名誉を毀損した人たちに公の謝罪を求めるつもりはないが、『君についてうそをついてすまなかった』というメッセージをパッと送ってくれたらいいのに」

https://twitter.com/Comey/status/1167074914630868993


https://twitter.com/Comey/status/1167074854757163009


これに対して、コーミー氏を罵倒し続けてきたトランプ大統領は29日、「発表されたばかりの監察総監報告がジェイムズ・コーミーに対してしたほど、誰かが徹底的に面目を失い非難されたことなど、この国の歴史でかつてなかったかもしれない。恥を知るべきだ!」とツイッターで書いた。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1167136119823224833


ホワイトハウスのステファニー・グリシャム大統領報道官は声明で、コーミー氏について「うそつきで情報漏洩(ろうえい)の当事者だと立証されている」と批判。そのせいでアメリカは「政治的動機による根拠のない魔女狩りを2年にわたり」耐えるはめになったとして、「コーミーは個人的な政治目的のために自分と自分の職務に恥辱をもたらした。この報告書はその事実をあらためて確認するものだ」と述べた。

コーミー氏は昨年4月、回顧録「A Higher Loyalty: Truth, Lies & Leadership(より高い忠誠――真実と嘘とリーダーシップ)」を出版し、トランプ氏について「不道徳で、真実を軽視する」と書いていた。さらに、FBI長官としてトランプ大統領とやりとりした経験については、「自分がかつて検事としてマフィアと戦っていたころを思い出した。暗黙の了解の輪が広がり、ボスがその場を完全に支配している。忠誠の誓い。身内かどうかで決まる敵対的な世界観。忠誠の掟(おきて)のために、大なり小なり、あらゆることについて嘘をつくのが当たり前になっている世界だ。道徳よりも真実よりも、何よりも組織を最優先する忠誠の掟のため」と書いた。

28日にもトランプ氏を批判し、「今晩、元同僚にトランプ批判を続けるのはもう疲れたと話したところ、応援の言葉をくれた。私たち全員にあてはまる言葉だ。『過ちや不公平や不正を目にしたら、声を上げよう。自分の国なのだから』と。彼の言うとおりだ。声を上げ続けよう」とツイートした。

https://twitter.com/Comey/status/1166553557962768385


会話記録の内容は

コーミー氏はFBIの慣習に沿って、2017年1月から4月にかけて大統領と会話した内容を、それぞれ直後に書き留めた。

それによると、大統領は2人だけの夕食の席でFBI長官に自分自身への忠誠を誓うよう求めた。

さらに同年2月には、政権発足前に駐米ロシア大使と接触したことについて嘘をついた責任で、マイケル・フリン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が事実上解任された翌日、コーミー氏は大統領執務室でトランプ氏と2人きりになり、フリン補佐官への捜査をやめるよう大統領から圧力をかけられたという。

フリン元補佐官はその後、ロバート・ムラー特別検察官の捜査によって司法取引に応じ、FBIへの偽証罪で有罪を認めている。

ムラー氏は、ニューヨーク・タイムズがコーミー氏のメモを掲載した翌日、司法省から特別検察官に任命された。

ムラー氏は2年近い捜査の末、今年春に捜査報告書を発表。ロシアによる大統領選介入については、体系的かつ多岐にわたる介入があったと断定したものの、「トランプ陣営の関係者がロシア政府と共謀もしくは連携したという事実を確定しなかった」と結論づけた。その一方で、大統領がコーミー長官を解任するなどして、ロシア疑惑への捜査を妨害しようとしたかについては、「大統領の行動と意図について得た証拠から我々は、犯罪行為はなかったと決定的に断定することができない」と判断を保留。現職大統領は起訴しないという司法省方針に従ったと説明し、7月の議会証言でもその説明を繰り返した。

(英語記事 FBI's James Comey spared prosecution over Trump memo leak