田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 9月1日のTBS系『サンデーモーニング』で、コメンテーターを務めるジャーナリストの青木理氏が韓国への「輸出管理」問題を、いまだに「輸出規制」と発言していた。だが、多くの国民は「輸出規制」ではないことを既に理解していることだろう。ただ、青木氏のように、韓国への輸出を制限する保護貿易的な措置だと勘違いしている人がまだいるかもしれない。

 簡単に説明すると、韓国への輸出管理は、テロや通常兵器に転用される可能性がある輸出財を管理する問題である。日本の優れた製品が他国に流れて、それがテロや戦争の目的のための兵器に使われることを防ぐための話だ。つまり、輸出入の数量制限や非関税障壁を強化するというためではなく、純粋に安全保障に関わる問題である。

 そもそも、国際間の安全保障の枠組みは、国家間の政治的な信頼関係で維持されている。もちろん、韓国との間でもこの政治的信頼関係はある。

 例えば、今回、韓国はいわゆる「ホワイト国(グループA)」ではなくなったが、これも国際的な安全保障の枠内での出来事である。別段、韓国が「敵」になったわけでもなんでもない。

 せいぜい頭を冷やして、日本やその他の国々に迷惑を掛けないように、テロや兵器転用の危険性を無くす努力をちゃんとしろ、と韓国に求めているだけにすぎない。それができないのであれば、それ相応の処遇を国際的な安全保障の枠内で行うだけだ、という話である。

 外為法に基づく輸出貿易管理令改正は8月28日から施行され、韓国向け輸出は一般包括許可が適用されず、またキャッチオール規制(簡単にいうとリスクがある場合は緊急に輸出検査)の対象となった。しかし、一般包括許可が適用されないからといって、韓国向けの輸出が禁止されているわけでもなんでもない。
2019年6月、G20大阪サミットで握手した後、すれ違う韓国の文在寅大統領(右)と安倍首相(ロイター=共同)
2019年6月、G20大阪サミットで握手した後、すれ違う韓国の文在寅大統領(右)と安倍首相(ロイター=共同)
 最初だけは審査に手間取るかもしれないが、よほどリスクの高い案件ではない限り、個別に輸出許可が下りる。実際に先行実施されたレジストとフッ化ポリイミド、フッ化水素の3品目についても、個別許可が下り始めている。今は珍しいせいか、メディアでも報道されているが、そのうち当たり前になれば、その価値もなくなるだろう。

 ちなみに、韓国が本当に「敵」ならば、個別許可でさえ下りることはないだろう。あくまで、日本と韓国が国際的な安全保障の枠組みを順守する中で、信頼のレベルが低下したためである。