2019年09月02日 12:55 公開

ボリス・ジョンソン英首相が発表した英議会の閉会をめぐり、イギリス政界が紛糾している。野党は3日から始まる議会で、合意なしブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)を避けるための法案を提出する予定。一方、与党・保守党は、所属議員が造反しないよう党議拘束をかける方針だ。

保守党の、下院で議員のとりまとめを行う院内幹事筋は、造反はイギリス政府のブレグジット交渉における立場を「破壊する」行為だと指摘。その上で、造反した議員は同党から除名され、次回選挙でも公認されないとだろうと警告している。

一方、最大野党・労働党の影の内閣は3日にも閣議を開き、合意なし離脱を阻止する計画をまとめる予定だ。

英議会は3日に夏休みが終わり、再開される。イギリスは10月31日に欧州連合(EU)離脱を予定しており、9月と10月は離脱をめぐる重要な審議の期間と目されていた。

野党は離脱阻止の法案提出へ

こうした中、ジョンソン政権は議会を9月第2週から5週間閉会すると発表。これに対しブレグジット反対派や合意なしブレグジットに反対する与党は、十分な審議の余地を与えない「非民主主義的」な方策だとして反発を強めている。

キア・スターマー影のEU離脱相は1日、合意なし離脱を阻止したい議員は今週中にも、関連法案を議会に提出する見込みだと語った。法案の詳細は3日にも発表される見通し。

一方、マイケル・ゴーヴ環境相は同日、野党提出の法案が通った場合、政府がこれに従うかどうかの明言を避け、「まずは内容を見てみよう」と話した。

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「簡単な選択」

ジョンソン首相は1日、院内幹事と造反の可能性について協議した。

院内幹事筋は、保守党議員が「3日に政府の意向どおりに投票しなかった場合、政府のブレグジットに対する交渉の姿勢を破壊し、(労働党党首)ジェレミー・コービンに議会を明け渡すことになる」と述べ、こう続けた。

「造反した保守党議員は全員、除名され、保守党候補として立候補できなくなるだろう」

保守党は、閣外協力する北アイルランドの民主統一党(DUP)も含めて下院の過半数を1議席上回っている。そのため今回は、政府と反対の立場に票を投じるか棄権すると、造反と見なされるという。

院内幹事筋はさらに、10月17日のEU首脳会議(サミット)に協定締結の機会があると述べ、「全議員は簡単な選択を迫られる。政府に従い協定締結の機会を守るか、コービンに票を投じてこの機会を失うかだ」と強調した。

フィリップ・ハモンド前財務相は8月31日、政府が造反議員を除名するのは「目を見張るほど偽善的だ」と批判した。

ハモンド氏は、ジョンソン政権の閣僚のうち8人が、テリーザ・メイ前政権が議会に提出した離脱協定をめぐる投票で、党議拘束を破って反対票を投じていたと指摘した。

ジョンソン氏は2日にも、合意なしブレグジットに反対する保守党議員と会談を持つ予定だったが、情報筋によると、首相は説明なしにこの会談をキャンセルしたという。

また、ハモンド氏との1対1の会談も予定されていたが、これも拒否したと報じられている。


イギリス議会、今週の動き

通常、下院でひとつの法案が審議・投票されるまでには数週間がかかるが、今週は3日間でその全てのプロセスが行われる可能性がある。

  • 9月3日: 下院が夏休みを終えて再開される。野党議員は「緊急に審議が必要な重要かつ特定の案件」についての審議を認めた「議事規則24条」にのっとり、法案を提出する予定。この時に法案の内容が初めて発表される
  • 9月4日:法案は通常、ここから議会のあらゆる審議段階を通っていく。しかし可決にはさまざまな投票を経て、過半数以上の支持を得なくてはならない。この日はジョンソン首相の初めての首相質疑も行われる
  • 9月5日: 下院が法案を可決した場合、この日から上院での審議が始まる。この審議は週明けまでかかる可能性がある。英議会は金曜日は開会しない。
  • 9月9日: 法案が上院を通過すれば、成立となる

ジョンソン首相は9~12日の間に議会を閉会するとしており、その阻止のためにはたった4日間ですべてのプロセスを終わらせる必要がある。

法案は下院だけではなく上院でも審議される。上院には合意なし離脱反対派が多いが、法案を阻止したい上院議員が審議を長引かせる可能性もある。


野党側の動きは?

労働党のコービン党首は3日の演説で、「イギリスを崖っぷちから救い出すためにあらゆることをする」と述べ、首相の閉会決定は「民主主義への攻撃」だと批判を展開する予定。

一方、労働党のトニー・ブレア元首相は、労働党は総選挙という「ゾウのわな」にはまっていはいけないと警告を発する見通し。

演説の中でブレア氏は、「総選挙を拒否するのは野党にとって直感に反することだが、今回の特別な状況では、ブレグジットが解決するまではそうするべきだ」と述べるという。

イギリスでは内閣不信任案が3分の2以上の賛成で可決し、14日以内に代替の政権が樹立しなかった場合、総選挙となる。

またゴードン・ブラウン元首相は、労組GMBや人権擁護団体「Hope Not Hate」、食品慈善団体サステインと共に、合意なし離脱となった際の食糧危機回避策を政府に求めた。

これは最近、合意なしブレグジットとなった場合、イギリスでは食品や医薬品が不足するとする政府資料が流出し、懸念が広がっているのを受けたもの。

これに対しゴーヴ環境相は1日、合意なし離脱でも生鮮食品不足に陥ることはないと説明。その半面、「一部の」食品価格が「上昇するかもしれない」が、「ほかの物価は下がるだろう」と話した。

(英語記事 Tory MPs warned against rebelling over Brexit