山岡鉄秀(AJCN代表、「日本エア野党の会」代表)

 「日本人は平和ボケしている」と日本人自身が自覚するようになったのは、いつごろだっただろうか。ずいぶん時間がたっているような気がする。

 通常、「平和ボケ」という言葉は、主に安全保障に関して使われる。集団的自衛権を否定しながら日米安保条約に依存する日本人の態度は平和ボケを通り越して、「超自己中心的」と言われても仕方がない。日米安保条約は集団的自衛権の行使そのものである。

 しかし、平和ボケはもちろん他の分野にも顕著に表れる。それを強く感じたのが、反ヘイトスピーチ関連の法律や条例だ。

 既知の通り、2016年6月3日に、通称「ヘイトスピーチ解消法」が公布された。この法律の正式名称は、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」である。

 明らかに、特定の外国人グループを日本人のヘイトスピーチから守ろうというという意図で作られた法律であることが分かる。特定の問題をピンポイントにして作られた法律というわけだ。

 その結果、当時の少なくない人が感じたように、この法律は一方通行だ。守られる側(客体)だけが固定されている。

 ヘイトスピーチをする側(主体)は日本人に限定されてはいないが、主に日本人を想定していることは明らかである。日本人が本邦外出身者からヘイトスピーチを受けるケースは想定していない。日本人をヘイトスピーチの被害から救うためには別の法律なり条例を積極活用しなくてはならない。

 この法律を起草した人は、日本人を敵視しているか、よほどナイーヴである。言い換えれば、平和ボケだ。当然ながら、この法律は批判に晒(さら)されたが、それに対して以下のような「言い訳」が述べられた。

(1)この法律は理念法で、罰則規定がない。
(2)政治的な発言はヘイトスピーチではない。
(3)この法律では日本人に対するヘイトスピーチも罰せられる。

 まず、(3)は完全な間違いである。本当に勘違いしているか、意図的にミスリードしているかは、定かではない。しかし、あくまでも罰則規定のない理念法だからいいじゃないか、という説明が繰り返しなされた。

 ところが、驚いたことに、この法律に罰則規定を加えた条例が作られようとしている。それが、「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」だ。
参院法務委員会はヘイトスピーチ(憎悪表現)解消法案を全会一致で可決した =12日午後、国会・参院第41委員会室(斎藤良雄撮影)
参院法務委員会はヘイトスピーチ(憎悪表現)解消法案を全会一致で可決した =12日午後、国会・参院第41委員会室(斎藤良雄撮影)
 なんと、違反者、つまり不当なヘイトスピーチを行ったと思(おぼ)しき人物や団体に市長が警告し、3回目の中止命令に従わなかった場合は50万円以下の罰金を科すというのである。法律よりも条令の方が厳しいというわけだ。

 これは、条例制定権を定めた憲法94条に違反するのではないのか。そこで、この条例(素案)の基となっているヘイトスピーチ解消法を作った政治家の一人である自民党の西田昌司参院議員に、私が代表を務める「日本エア野党の会」として質問をぶつけてみた。次項に全文を示す。