2019年09月05日 12:59 公開

イギリスの欧州(EU)離脱をめぐる極限のような日々が1週間続き、ことの大きさを伝えるこちらのボキャブラリーもそろそろ尽きようとしている。

それでも最善を尽くし、山場となった4日の英議会の様子を伝える。

1) ブレグジット延期法案が下院を通過

下院が3日に議事進行の主導権を政府から議員側に移す動議を可決した時点で、野党と保守党造反議員の勝利は見えていた。

下院は4日、野党が提出したブレグジット(イギリスのEU離脱)延期法案を賛成327、反対299で可決した。

この法案は、首相は10月19日までに、離脱協定の議会承認を得るか、さもなければ下院から合意なし離脱の承認を取り付けなくてはならないと定めている。法案を策定した最大野党・労働党のヒラリー・ベン議員の言葉を借りるなら、この法案の目的はただ一つ、EUから離脱協定のないまま離脱する「合意なしブレグジット」を阻止することだ。

法案は今後、上院で審議される。

可決前にはちょっとしたドラマもあった。労働党のスティーヴ・キノック議員が提出した、法案に対する改定案が、政府の投票集計員が姿を現さなかったため承認されそうになった。

これは後から、政府側の戦術だったことが判明した。BBCのヴィッキー・ヤング記者によると、「政府は投票集計員を送らないことでわざとスティーヴ・キノック議員の改定案を通そうとした」という。

ただ、この改定案にはもともと法的拘束力がないという。

https://twitter.com/BBCVickiYoung/status/1169320998572896258


法案可決を受け、ボリス・ジョンソン英首相はすぐに動いた。

法案を支持した議員を非難し、こうなれば選択肢はただひとつしかないと述べた。つまり総選挙だ。

2) しかし解散総選挙は否決された……今のところは

解散総選挙を実現するには下院(定数650)の3分の2の支持を得なくてはならなかった。

しかし下院は、総選挙を求める首相の動議を賛成298票、反対56票、棄権288票で否決。必要とされていた434票には136票、足りなかった。

否決の最大の要因は、野党側がジョンソン首相を信じなかったことだ。

労働党のジェレミー・コービン党首は、個人的には総選挙を望んでいると話した。自由民主党のジョー・スウィンソン党首も、首相に「やってみなさい」と促した。

しかし彼らは、スコットランド民主党(SNP)など他の野党と同じように、まずは合意なしブレグジットを完全に除外することを選んだ。野党は全員、ジョンソン首相がこのまま10月15日に総選挙を行い、勝利し、10月31日の離脱になだれ込むといった事態にならないことを、100%保証しておきたかったのだ。

しかし、ブレグジット政局に疲れ果てた有権者はホッとすべきではない。総選挙は結局のところ避けられない状況になっている。

ジョンソン政権は現在、下院で過半数を20議席も割っている。コービン党首をはじめとする野党側はジョンソン首相を排除したいと思っている。

つまり究極的には、総選挙をめぐる疑問は「もし」ではなく「いつ」なのだ。

3) ジョンソン氏、初の首相質疑

ブレグジットをめぐる一連の審議の数時間前、ジョンソン首相は就任後初の首相質疑に応じたが、これは記憶するに値するものだった。イギリスでは首相は毎週水曜日、労働党党首をはじめとする議員からの質問に答える慣習がある。

もちろん、ジョンソン首相とコービン党首の仲は冷え切っている。両者はブレグジットについてテニスのボレー(ボールが地面に跳ね返る前に打ち返すこと)合戦のようなやりとりを行ったが、しっかりとした回答は少なかった。

コービン氏は繰り返しEUとの交渉計画の詳細を明らかにするよう求めたが、ジョンソン首相は何も発表しなかった。

一方、ジョンソン氏はコービン氏に総選挙への支持を求めたが、答えが得られないと「女々しい男だ」とつぶやいた。また、合意なし離脱阻止法案を繰り返し「降伏法案」と呼んだ。

この言葉は、今後数週間にわたって何度も聞かれるだろう。

首相質疑の後、サジド・ジャヴィド財務相が来年度の予算発表を行い、緊縮財政を終わらせると宣言した。

4) ブルカをめぐる議論、謝罪はなく

首相質疑が最も盛り上がったのは、実はブレグジットとは全く関係ない事柄だった。

労働党のタンマンジート・シン・デシ議員はジョンソン氏に対し、ムスリム女性の被るブルカが郵便箱に似ているという数年前の発言について謝罪するよう強く求めた。

この質問は、周囲の議員から拍手喝采を浴びたが、ジョンソン首相は謝罪しなかった。

自由民主党のスウィンソン党首がこの質問を支持し、首相の言葉は「重いもの」で、発言には「もっと注意した方がいい」と述べたときも、謝罪の言葉はなかった。

5) 保守党の造反議員、別れと抵抗

3日の投票で造反した21人の保守党議員には、速やかに鉄ついが下った。ジョンソン首相の意に反したとして、何十年も保守党員として活動してきた議員たちが党から追放され、無所属となった。

4日の議会では多くの造反議員が演説し、追放に対する心痛と困惑を訴えた。

ウィンストン・チャーチル元首相の孫に当たるサー・ニコラス・ソームズは、目に涙は浮かべないまでも、明らかに声を震わせながら、次の選挙では立候補しないと発表した。

「37年間の議員生活の終わりが近付いている。下院の一員であったことは言葉にならないほどの名誉であり誇りだ。このような終わり方になったのは本当に悲しい」

アリスター・バート議員は、「同僚の皆さんに言っておく。われわれが追放された今、次は誰だろうか?」と述べ、「靴を眺めながらではなく、上を向いて議場を去ろうと思う」と話した。

(英語記事 Brexit's big week: Five things we learned on Wednesday