2019年09月07日 9:26 公開

ダニエル・クレイマーBBC政治リサーチ班

英上院は5日、イギリスが欧州連合(EU)と離脱条件の合意のないまま、10月31日に離脱してしまうことを阻止しようとする法案を可決した。法案は週明けにも、女王の裁可を受けて法律として成立する。しかし、ハロウィーンの日の合意なしブレグジット(イギリスのEU離脱)がこれで完全にあり得なくなったわけではない。どういう展開があり得るか、並べてみる。

下院が代替案を可決

野党・労働党のヒラリー・ベン議員が提出した離脱延期法案では、離脱期限を2020年1月31日に延期するよう10月19日にEUに要請するよう、ボリス・ジョンソン首相に義務付けている。しかし、首相がそうしないで済むシナリオが、2つある。

  1. 下院がまた「意味ある投票」を行い、ブレグジット協定を承認する(「意味ある投票」を覚えていますか?)
  2. 下院が合意なし離脱を承認する

どちらの場合でも、ベン議員の法案は離脱期限の延長要請を強制するものではない。

政府は法律を無視できるか

法案は、離脱の延長を首相自身が、欧州理事会議長に直接、要請しなくてはならないと規定した。

首相が書くべき書簡の文言まで、厳密に定めている。

そのためジョンソン氏は理屈の上では、その書簡を書くこと、あるいは書簡に署名することを拒否できる。しかし、そうなればほぼ確実に法的措置がとられるだろう。

6日の上院審議では、ブレグジット担当閣外相のキャラン卿が、政府は「法律を順守する」と述べた。

政府は法律を廃止できるか

下院の今の構成からすると、政府が新法を廃止するのは、まず不可能だ。

しかし、10月19日より前に総選挙があれば、これは変わる可能性がある。

ジョンソン首相が求めるように総選挙が前倒しされ、その結果、首相が過半数を獲得すれば、今回の新法を廃止し、EUに離脱延長を要請しないまま、離脱まで突き進むことが可能になるかもしれない。

EUが延期を拒否する可能性は

イギリスの法律が何と言おうと、ブレグジットの延期にはすべてのEU加盟国の同意が必要だ。

当初は3月末だった離脱期限は、6月、そして10月末とすでにたびたび延期されている。再三の延期をまたしてもイギリスに許すべきだと、欧州各国の首脳が納得しない可能性はある。

エマニュエル・マクロン仏大統領は、これ以上のブレグジット延期を認めない可能性があるとみられている。

ジョンソン首相がEU加盟国に働きかけ、自分の延期要請に反対するよう説得することもあり得る。

EUが別の期限を逆提案してきたら?

ベン議員の法案は、離脱延期の期限を最長3カ月と定めている。

しかし、もし他のEU加盟国が別の期限日を逆提案してきた場合、下院が2日以内に反対しない限り、首相はこれを受け入れざるを得ない。

ベン議員の法案の議会審議でも、この点が議論の対象になった。EUに何を言われてもイギリスは同意するしかなくなると、下院でも上院でも一部の議員が反発したためだ。

もし、EUが別の離脱期日を提案し、下院がこれを拒否したならば、イギリスはやはり合意なしで離脱する可能性がある。

将来的な合意なし離脱はあり得るのか

新しい法律は10月31日の合意なし離脱を回避しようとするものだが、将来的な合意なし離脱の可能性をゼロにすることはできない。

それを避けるには、方法は2つしかない。EUと合意した離脱協定を議会が承認し、実施するのがひとつ。あるいは、ブレグジットをそっくりまるごとキャンセルするかだ。

(英語記事 Could a no-deal Brexit still happen on 31 October?