高橋洋一(嘉悦大学教授)

 2012年9月の自民党総裁選の際、安倍首相は消費税を上げる前にデフレ解消をする、といいました。安倍首相は消費税の増税には消極的でしたが、法律になったものを無視することはできず、「法律どおり」2014年4月、消費税率が5%から8%に引き上げられました。

 せっかくアベノミクスによってデフレ対策が打たれ、2014年4月時点ではインフレ目標達成にかなり近いところまで行っていたのが、消費税率を上げたことで景気は逆戻りしてしまいました。

 離陸し始めた状態で安定飛行に入っていなかった景気は、消費税の増税によって急失速してしまいました。

 こうした状況を受けて、2015年10月の増税予定は1年半先送りされ、2017年4月の増税予定がさらに2年半先送りされました。安倍首相が財務省の意向を退け、かろうじて踏みとどまったかたちでした。

 過去3回の消費増税のうち、3%の税率で導入した1回目(1989年)は、バブル期で景気がよい状況でした。しかも物品税の減税と同時に行なったので、タイミングとしては悪くなかった。

 しかし、税率が3%から5%に引き上げられた2回目(1997年)、5%から8%に引き上げられた3回目(2014年)の消費増税は最悪です。いずれもデフレのときに行なったため、景気を大きく冷え込ませる結果となりました。

 現在、デフレは解消されつつありますが、脱却には至っていません。企業で人手不足の状況が生まれ、雇用回復に次いで当初の狙いである「賃金上昇」がようやく始まる、と思ったところで、政府は事実上の「移民」緩和政策を決めてしまった。
2018年10月、首相官邸で開かれた会合で、麻生財務相(左)と顔を並べる安倍首相
2018年10月、首相官邸で開かれた会合で、麻生財務相(左)と顔を並べる安倍首相
 外国人労働者の流入が日本の賃金を押し下げていることは、筆者の実証分析でも立証されています。

 あまりにもタイミングが悪く、さらに2019年10月に消費増税を実行してしまえば、2012年以降、7年に及ぶアベノミクスの努力はすべて水の泡でしょう。