「今回の人事も、キャラの配置がいいね」と、くだんのベテラン編集者氏は劇画論で人事を分析する。

 「やはり麻生、二階、岸田、菅はキャラとしては外せない。麻生の皮肉、二階のおとぼけ、岸田のシッポ振り、そして虎視眈々と次を狙う菅がメディアをにぎわせてこそ、主役の安倍は引き立つ。劇画的には敵対勢力との戦いでダイナミックにストーリーを展開したいところだけど、野党があの体たらくじゃ、どうにもならない。石破(茂元幹事長)も沈んじゃって、安倍のライバル物語にもならない」

 では、前回の内閣改造でも入閣が取りざたされた(小泉)進次郎はどうか。

 「下馬評では入閣なしだった。〝産休宣言〟は入閣拒否のメッセージだと、メディアも政治評論家も筆と声をそろえたけど、劇画担当としては、進次郎は絶対必要なキャラだね」

 「安定と挑戦」のキャッチフレーズを考えれば、安定はいいとしても「挑戦」をどうするか。キャラとしては進次郎をおいて他にいないじゃないかと、ベテラン編集者氏は言ったものだ。

 しかも、組閣の国民の関心度はサプライズ人事に比例する。「進次郎の今回の入閣はない」と下馬評でさんざん流しておいて、組閣発表前日の午後6時になって「入閣調整中」の速報テロップがテレビ画面に流れ、「おッ、進次郎が入閣!」

 サプライズになり、安倍改造内閣は「新鮮味」と「挑戦色」が加わって、イメージはぐっと変わることになる。

 麻生、二階、岸田、菅と進次郎を並べてみれば安倍総理の狙いは一目瞭然。『水戸黄門』にジャニーズ系をキャスティングするようなもので、ぐっと若々しくなるのだ。

 最後に、女性閣僚についてはどうか。

 ベテラン編集者氏はこれも『水戸黄門』を引き合いに出して、「由美かおるの入浴シーンが〝お約束〟だったよね。ストーリー的には意味はないけど、キャラ的には大事。視聴率に大いに貢献した。それと同じといっちゃ失礼だけど、三原じゅん子なんかハマり役だったけど残念だね」

 国内外に問題山積のいま、〝入浴シーン〟に国民の関心が行くのはさすがにまずいとでも思ったのだろう。

 劇画も、テレビドラマも、映画も、そして政権もそうだが、継続は広い意味でウケるかどうかがポイントになる。政権は常に批判にさらされるが、たとえ酷評であっても登場人物のキャラによって命脈を保つことがある。野党が存在感を希薄にしていくなかで、「N国」や「R新選組」が注目を集める現状が、そのことを如実に物語っている。
聴衆と手を合わせる自民党の小泉進次郎氏=2019年7月、大分県別府市(小澤慶太撮影)
聴衆と手を合わせる自民党の小泉進次郎氏=2019年7月、大分県別府市(小澤慶太撮影)
 麻生の、あの憎々しい口のきき方、そして桜田の嘲笑キャラが安倍政権にどれだけ貢献したことか。能力よりもむしろ登場人物のキャラと配置が勝負ということになる。

 そういう意味では、地味な野党と相対的に自民党のキャラは多士済々で個性豊か。安倍内閣の評価とは別として、改造内閣の配役の妙は、憲法改正という本丸を睨む安倍総理の「連載・第四部」の始まりとなる。(文中一部敬称略)

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