加藤氏は首相の最側近の一人で、かつて内閣府特命担当大臣(少子化対策、男女共同参画)および一億総活躍、女性活躍、再チャレンジ、拉致問題、国土強靱(きょうじん)化と七つの担当を兼務した。全く関係なさそうなポストの兼務だが、要するに世論の動きに対応してタイミングよく政策を出すのが仕事で、それだけ首相に能力を買われてきたといえる。

 また、高市早苗衆院議院運営委員長も、総務相に復帰した。安倍政権では女性初の党政調会長、そして総務相を務めてきた。女性議員の中で、最も安倍首相に重用されてきたといえる。総務相の在任期間は1077日と、歴代1位のベテランが復帰したわけである。

 外相には、茂木敏充前経済再生相が横滑りした。既に「日米貿易交渉」の先頭に立ってきた茂木氏の仕事に大きな変化はない。

 今後、日韓関係は半導体部品の輸出管理について日本の措置の正当性を主張することが中心になるし、日露関係は経済協力が日本側の持つ交渉カードだ。比較的安定している日中関係も、「一帯一路」計画に対する日本の協力をどう進めるかが課題だ。経産省の幅広い業務のうち、海外業務だけに特化して取り組むという感じだ。

 一方、防衛相には河野太郎前外相が横滑りする。日米の安全保障体制の安定を保ちながら、日韓軍事秘密保護協定(GSOMIA)の破棄を表明した韓国と交渉することが最重要の仕事となる。河野氏が既に外相として取り組んできたことだ。要するに、外交と安全保障に関しては、安倍政権の方針に変化なしというのが、国内外へのメッセージとなる。

 世耕弘成前経産相は、党参院幹事長に転出する。今年7月の参院選で、自民党や公明党などの「改憲勢力」は憲法改正の国民投票発議を可能とする3分の2の議席数を割ってしまった。安倍首相の悲願である憲法改正を進めるのは難しくなったが、まずは参院自民党を一枚岩にまとめるのが重要ということだろう。

 憲法改正については、細田派の領袖(りょうしゅう)である細田博之元官房長官が党憲法改正推進本部長に起用されると報じられている。安倍首相は憲法9条に関して、戦争放棄を明記した第1項、第2項を変えず、第3項に「自衛隊」を明記するという小幅で現実的な改憲を主張している。
2019年4月、桜田前五輪相の辞任について、厳しい表情を浮かべながら首相官邸で報道陣に対応する安倍首相
2019年4月、桜田前五輪相の辞任について、厳しい表情を浮かべながら首相官邸で報道陣に対応する安倍首相
 これには、石破茂元幹事長、船田元元経済企画庁長官など専門的に改憲に取り組んできた議員が反発している。だが、安倍首相は彼らを排除し、側近を中心に改憲を進めようとしてきた。専門性よりも政治的に可能な改憲をめざすという方針は、今後も変化なしということだ。

 悲願の改憲を進めるための基盤となるのが、経済の安定によって内閣支持率を高く保つことだ。そのキーマンとみられるのが、安倍首相が最も信頼する政治家の一人で、党税制改革調査会長に起用された甘利明前選挙対策委員長だ。