奇しくも9月17日で小泉純一郎訪朝から17年を迎える。拉致被害者5人とその家族が日本に帰国してから、歴代の日本政府は拉致被害者を1人も救えていない。

 政権に復帰した安倍首相は、2012年12月28日に「必ず安倍内閣で完全解決の決意で進んでいきたい」と被害者家族に語った。それからでも6年9カ月、14年のストックホルム合意は実現したものの、日本政府が北朝鮮の調査「報告書」の受け取りを拒否したため、時間は無為に過ぎていくばかりだ。

 河野議員は外相として北朝鮮との交渉においていかなるイニシアチブを取ったというのだろうか。寡聞にして聞いたことがない。

 北朝鮮が安倍政権を相手にしないとの基本方針を定めたのは、2017年夏である。9月20日の国連総会で安倍首相は北朝鮮に対し、口を極めて批判した。さらに河野議員は9月21日にコロンビア大学で講演し、北朝鮮との「断交」を国際社会に求めた。その後に米朝接近があったため、安倍首相はトランプ米大統領や韓国の文在寅大統領を通じて金正恩委員長に拉致問題を提起してもらった。国際社会に遅れまいとの焦りは募れども「6カ国協議国」(北朝鮮を除けば5カ国)でいまだ金委員長と会えていないのは安倍首相だけである。「条件を付けず」に首脳会談を行いたいと安倍首相が発言したのは、5月3日だ。あまり報道されていないが、それ以降も北朝鮮を日本批判に向かわせたのも河野議員による不用意な発言であった。

 5月25日に静岡県島田市の講演で「制裁を回避する3つの穴を塞ぐことで」金委員長の「決断を促す」などと「上から目線」で「正しい決断」を要求したのである。北朝鮮にとって「最高尊厳」に対する批判的言及が最も許せないものであることは、対北朝鮮外交の基本に属する問題である。河野議員は安倍首相の悲願に砂をかける行為をしたのだった。

 ツイッターで河野議員を批判する書き込みをした者に対してはしばしば「ブロック」といって、河野議員の書いた内容を読めない措置を取る。有権者に対して政治家のすることかとの批判もあるが、それはまた自由だろう。驚くべきは、おそらく、本人が批判を読んでいて、いちいち「ブロック」をしていることである。ちなみに、私も河野議員のツイッターを読むことができない。「ブロック」されているからである。

 私が最近もっとも唖然(あぜん)としたのは、徴用工問題で駐日韓国大使を呼びつけ抗議した場面だ。日本政府の立場を長々と説明し終えた直後のことである。相手が発言し始めたところで遮って「無礼だ」と口にした。この発言は近く予定されている内閣改造において外相を続投したいがために、安倍首相へのパフォーマンスだったとする見方がある。そうかも知れないが、それにしても外交相手に対してあってはならない行為である。

 韓国も北朝鮮も「誇り」をもっとも大切にする民族であることも外交的な常識である。かくて河野議員は、英語力には素晴らしい能力があるものの、朝鮮半島問題では、明らかに失敗を繰り返してきた。
会談を前に握手する、河野太郎外相(左)と韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相=2019年2月15日、ドイツ・ミュンヘン市内のホテル(力武崇樹撮影)
会談を前に握手する、河野太郎外相(左)と韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相=2019年2月15日、ドイツ・ミュンヘン市内のホテル(力武崇樹撮影)
 北朝鮮外交を担うべく外務省の最高責任者だった河野議員は、拉致問題を最重要課題だとしている安倍政権において、明らかに職責を果たしていない。最後の記者会見でも拉致問題に触れなかった。できないのである。これは後世に厳しく記録される歴史的事実である。

 新しい外務大臣となる茂木敏充氏には、小泉訪朝を実務的に準備した当時の外務省の担当者たち、たとえば田中均元外務審議官などからも率直な意見を聞き、北朝鮮を含む北東アジア外交を積極的に切り開いていくことを期待したい。

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