筆者は、長年放置され老朽化したダムによる水産資源などへの悪影響は雨畑ダムに限ったことではないと考える。NHKの『クローズアップ現代+』でも、ダムは今後どうあるべきかという視点で、熊本県にある球磨川のダム撤去事例を解決のヒントとして、問題が起きている雨畑ダムも含めて報じている。

 このように、雨畑ダムをめぐる富士川の濁りやサクラエビの不漁といった多岐にわたる問題に対し、打開策が見いだせないのが現状だ。そこで、課題と打開策を探るため、筆者は静岡新聞の取材班とともに今年7月、現地視察を行った。

 最初にサクラエビ漁の拠点である由比港、さらに日軽金の工場を視察し、濁った水を放出する場所と濁った海を確認した。実際に土石流のような濁りのまま海に放出されており、サクラエビ不漁の主因かどうかは分からないが、水産資源に何らかの影響があることは明白で、パイプラインに濁り水を通すこと自体をすぐにでも止めるべきだと痛感した。

 さらに上流に行くと、富士川と早川の合流点がある。ここで、明らかに早川は白く濁っており、自然では起きない濁りであることは明らかだった。この濁りの原因を探ると、やはり雨畑ダムだけの問題ではないことが分かった。

 要は、濁りの原因は山の荒廃も要因の一つであり、すべてが雨畑ダムではないということだ。特に、東洋一と言われた国土交通省所管の砂防堰堤が土石流を発生させている光景などは、日本の全体の砂防堰堤の効果の限界が垣間見えたかたちだ。

 結局、山を守るために間伐や植林を継続していかない限り、堆積する砂を防いでも砂を取り除かなければならないという問題意識を持ち、環境的側面から国策として再考すべきだということである。

 では、こうした現状を踏まえ、具体的にどう対応すればよいだろうか。

 まずは、水質汚濁防止法の改正が必要だ。同法は飲料水や農業用水が対象で、それ以外は適用されないという抜け穴がある。また、水利権の没収条件の再定義も必要になる。現状では一度許可すれば、その後に問題が発生してもそのまま放置されている。
※写真はイメージ(GettyImages)
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 さらに、早川町のように残土や土砂などの投棄が多い地域があるが、河川敷での投棄の許可は業者の申請ありきで、不法投棄をチェックする仕組みがない。台風の際などにどさくさ紛れで川に汚水を垂れ流す不正も全国で相次いでおり、砂利採取法や採石法も許可の際だけの法律であり、取り消し基準なども明文化すべきだ。河川敷を監視するルールも必要ではないだろうか。

 一方で、水産資源への影響が放置された要因の一つに、漁協関係の古い体質がある。富士川漁協の関係者によると、ヤマメやウナギ、ニジマスの放流資金は、補償額が増えても単価は上昇していないという。