田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコが保有する石油施設へのドローンを利用した攻撃は、世界経済にも大きな衝撃を与えた。イエメンの親イラン武装勢力が攻撃を行ったと声明を発表したが、他方でポンペオ米国務長官はイランの直接の関与を示唆した。ただしトランプ大統領自身は、確証を得ているものの「犯人」を敢えて特定せずに、サウジアラビアの対応待ちの姿勢をツイッターで表明している。

 イランのハッサン・ロウハニ大統領との対談を模索し、同時に対イラン強硬派と目されたボルトン補佐官の解任という政治的事件が起きた直後なだけに、幾重にもきな臭さを感じさせる出来事だ。あたかも安倍晋三総理がイランの最高指導部と会見を重ねた直後に、日本の海運会社が保有するタンカーがホルムズ海峡で攻撃されたことを想起させる。

 サウジアラビアの石油生産の半分が、今回の施設攻撃によって当面失われてしまったという。復旧までに数週間を要する。この石油の供給量の減少は、世界の石油供給量の約5%を占める。攻撃の直前までは、世界の石油市場は「軟調」ぎみであった。

 しかし、攻撃を受けて石油の先物価格は一斉に高騰した。指標の米国産標準油種(WTI)、北海ブレント先物ともに十数%の高騰であり、後者は特に一時1991年以来である19%もの上昇だった。為替レートも円高傾向となった。わずかドローン10機の攻撃で、世界の石油生産が脅威を受けることにも驚きだが、問題を日本経済面で見れば、より深刻な面があらわになる。

 米中貿易戦争も今後長期化が予想され、そしてイランとサウジアラビアなど湾岸諸国の地政学的リスクの高まりの中で、日本政府がまず取り組んでいるのが、消費増税という異常な事態だからだ。
無人機攻撃を受け煙を上げるサウジアラビア・アブカイクの石油施設のテレビ映像=2019年9月14日(AP=共同)
無人機攻撃を受け煙を上げるサウジアラビア・アブカイクの石油施設のテレビ映像=2019年9月14日(AP=共同)
 ところで、9月8日に放送されたNHKの日曜討論「消費増税・米中貿易摩擦…日本経済の先行きは」は久しぶりに同番組で注目する内容だった。なぜなら出演者に聞くべき意見を持つ人たちが多かったからだ。前日銀副総裁で学習院大名誉教授の岩田規久男氏、明治大准教授の飯田泰之氏、慶応大教授の竹森俊平氏らの意見は特に注目すべき内容だった。竹森氏の意見には賛同できない点もあるが、岩田、飯田両氏の指摘はこれからの消費増税後の日本経済を考える上で示唆に富んでいた。

 討論番組の軸をまとめると、消費増税の「悪い」影響を重視している人たちと、消費増税の「良い」影響を重視している人たちとでもいうべきものとして整理できる。筆者は後者の人たちの理屈がまったく理解できない。

 特に消費増税をすることによって将来不安がなくなってそれで消費が上向くというロジックを語る人がいたが、過去の消費増税の結果を見ても、事実として間違っている。直近でも2014年の5%から8%への引上げは、実質消費でもまた消費者のマインドも大きく引き下げてしまった。増税前の水準まで回復したのは、数年後の2017年になってからだった。それも今は消費者マインドを見ると大きく低下している。