消費者態度指数という経済統計がある。これは、今後の暮らし向き、収入の増え方、雇用環境等をアンケート調査の結果から合成した指標である。要するに消費者マインドといっていい。前回増税時を見てみると、2人以上世帯で季節調整済みの消費者態度指数では、アベノミクスが本格的に稼働していたときは、消費者マインドは非常に高い水準だった。

 例えば、日本銀行の政策が大胆な金融緩和に変更された時点(2013年4月)から消費増税のいわゆる「駆け込み需要」が起きる前までの時点(同12月)の消費者態度指数の平均は、43・4という高い水準だった。ところが消費増税の直前には37・5まで急激に悪化してしまう。当時は消費増税前なので、消費自体は急激に増加していたはずなので、おかしいのではないか、という人もいるだろう。

 しかし、消費者態度指数は、消費者のその時点の消費のボリュームを示すのではなく、これからの消費の動向を示すものと考えるべき数字である。いわば「駆け込み需要」で、消費を増やしている一方で、消費者マインドは急激に冷え込んでいたことになる。これが実体化していくのが2014年4月以降である。

 また、消費者マインドも引き続き、実際の増税を受けて冷え込み続ける。具体的には、2014年4月には37・1に低下し、そこから年末までの平均は39・4であった。前年の同時期に比べると、実に4ポイントも大きく低下している。つまり、消費増税すれば将来不安がなくなり消費が増加するというよく流布されている意見は、まったく事実に基づかない、ただのトンデモ経済論にしか筆者は思えない。

 これが回復に戻るのは、いわゆる“トランプ景気”(2016年末~17年)であり、トランプ景気は、後に日本の輸出を大きく改善させ、また輸出が刺激されることで企業の設備投資が増加して日本経済を回復させていった。設備投資の増加によって経済が上向き、消費マインドも持ち直したわけである。

 これが再び19年に悪化したのは、まさに米中貿易戦争による輸出のかげりや株価の乱高下、為替レートの円高よりの基調変更だった。現状では、消費者マインドの低下は18年から継続していて、直近の19年8月末では、消費者態度指数は37・1まで激減している。この数字は、前回でみると消費増税開始時点と同じほどの低水準である。
20カ国・地域(G20)財務省・中央銀行総裁会議に臨む麻生太郎財務相(右)と日銀の黒田東彦総裁 =2019年6月、福岡市内のホテル(代表撮影)
20カ国・地域(G20)財務省・中央銀行総裁会議に臨む麻生太郎財務相(右)と日銀の黒田東彦総裁 =2019年6月、福岡市内のホテル(代表撮影)
 新聞やテレビ、また安倍政権自体も今回は「駆け込み需要」が見られないと発言しているのは、このすでに十分に冷え込んだ消費者マインドが原因である。前回はアベノミクス初年度で、消費が急上昇していたのとは真逆の環境で、今回は消費増税を迎える。

 冒頭の日曜討論では、岩田氏は、消費の弱さを可処分所得(税引き後の所得)が少ないことを挙げていた。これは民主党政権時点の12年度と比較して、統計のとれる最新(2017年度)の可処分所得が1・2%しか増えていない、というそもそもの私たち家計がさほどよくなっていない実情にあることを岩田氏は指摘していた。