経済の動向を考えるポイントは、総需要(経済全体でモノやサービスを買う側と簡単に理解してほしい)が、総供給(経済全体でのモノやサービス)に対して上回っているか、不足しているかが、重要になってくる。総需要の構成要素は、民間の消費、民間の設備投資、外需、そして政府部門の支出である。現在では、民間の消費が低迷、外需が米中貿易戦争で不安定、そしてけん引役の設備投資はいまだに経済を引っ張っているが、岩田氏の指摘では、設備投資の過剰感があり在庫調整を迎える可能性が払拭できない。

 日本銀行などの最新の統計によれば、総需要は総供給をここ数年、継続的に上回っている。総供給と総需要の差は「需給ギャップ」というが、これは近時では多少減少しているとはいえ、プラス幅を維持している。雇用状況が失業率2・2%まで低下するなど、この経済の「良さ」の裏返しだろう。だが、これはあくまで限定付きの「良さ」でしかない。本当にわれわれの生活実感(消費者マインドはその重要な側面)が改善するには、岩田氏の指摘のようにまだまだ足りないのだ。

 なぜ足りないか。それは総需要が不足しているからだ。見かけは需給ギャップがプラスだとしても、それはわれわれの賃金を増加させるには不足しているのだ。総需要が増加し、需給ギャップがより一層拡大、それが「人手不足」を招き、賃金を上げる圧力になっていくことが重要である。今のレベルでは、賃金圧力に不足している。これが生活実感レベルでみると消費マインドの悪化の基本的な背景である。

 消費増税はまもなく実施されてしまうだろう。日本の動脈ともいえる湾岸地域で地政学的リスクが高まる中、そして米中貿易戦争の見通しも立たない中ででもだ。まさに異様な状況といえる。

 野党は今さら消費増税を防ぐと国会戦術を練っているようだが、本気のものではない。本気だとすれば今までも十分に時間があった。こんな土壇場では、ただ世論うけを狙っているにすぎない。他方で、これは日曜討論で、竹森氏が指摘していたように、安倍政権の消費増税対策が今までになく柔軟で積極的なものになるという意見もある。

 だが、筆者はこの意見に懐疑的である。現在の安倍政権の財政政策や、また重要なパートナーである日本銀行の金融政策は、消費増税問題を抜きにしても、あまりに現状でやる気がないレベルだ。本当に財政・金融政策が事態に応じて柔軟に機動するならば、米中貿易摩擦の動向に対応してすでに機敏に動いているはずではないだろうか。 
財務省の外観=東京・霞が関
財務省の外観=東京・霞が関
 それが今はまるで消費増税ありきに目線がいってしまい、景気対策がすべて「増税したらやります」という国民からすると本末転倒になっている。特にその傾向が強いのは、日本銀行だろう。そのやる気のなさは際立っている。おそらく黒田東彦日銀総裁は、もともと財務省出身のバイアスがあり、そのため財務省の宿願である消費増税すれば「財務省へのお祝い」で金融緩和するつもりなのではないか、と筆者は疑っている。

 まさに消費増税、いや財務省の顔色ありきの政策スタンスに政府も日銀も陥っている。日本の官僚制度の腐敗を象徴しているのが、この消費増税問題ともいえるだろう。

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