いわゆるGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)には、テロの事前準備をしている人が、分かっているはずだと思う。実際、これらの会社は、子会社などを使って、イスラムのテロに走りそうな人々を、ネットを介して「逆洗脳」するようなことはやっている。しかし、警察などとの直接協力には非常に慎重である。

 そこで米国でもオバマ政権末期くらいから、令状がなくても個人のパソコン履歴を連邦捜査局(FBI)などが調べられるようにする法整備が、少しずつ進んでいる。また、最近の人種差別主義者によるテロを契機として、家族や同僚の申し立てにより、72時間まで令状なしに人を拘束できる「レッドフラッグ法」の制定も考えられている。この問題と日本で応用できるかに関しては『サイコ型テロへの処方箋』で詳しく書いた。

 こうしたネットを通じたものも含む個人の通信記録の傍受に関しては、9・11以降ブッシュ二世政権がセットした「ステラウインド・プログラム」により、国家安全保障局(NSA)が米国では部分的に行っていたが、機密情報を暴露したスノーデン証言の影響などもあり、トランプ氏は最近、同プログラムは現在閉鎖していると表明している。

 このステラウインド・プログラム以外にもブッシュ二世政権の設立した愛国者法により、米国国内ではテロ容疑者に対する通信傍受は、非常に簡単にできるようになっている。また、1990年代からあった「軍用装備転用プログラム」により、警察が連邦政府の助成金で、機関銃、装甲車などの軍用装備も購入できる。やはり9・11以降に作成された「ウォッチ・リスト」には、米国国民4600人を含む120万人が登録され、米国への入国や飛行機への搭乗を禁止されている。

 実はアルカイダもISも、いったんは壊滅に近い状態になったものの、前記のように世界各国の支部をベースに復活してきている。ハムザが暗殺されたからといって、ザワヒリらの存在を考えると、アルカイダが再び弱体化する保証もない。イラン系のテロ集団の恐ろしさは、サウジの石油施設攻撃でも証明された。ネットを使ったテロ誘導の方法もある。そして彼らは東京オリンピックでテロを起こすことで、自分たちの復活をアピールしたいと考えている!

 日本は一刻も早く日本版の監視プログラム「ステラウインド」、「軍用装備転用プログラム」、「ウオッチ(監視)リスト」あるいは「レッドフラッグ法」などを整備するべきだろう。私は『東京オリンピック・パラリンピックは、テロ対策のレガシーになるか?』(近代消防社)という書籍も書いているが、そのための取材を通じても、まだ日本のテロ対策は十分とは感じられない。

 このまま東京オリンピックを迎えたら、重大テロが発生するかもしれない。それは外国から入って来たテロリストによるものとは限らない。京都アニメーションで起きたような不祥事が、オリンピック開催中に競技場からは遠い場所だったとしても、外国人観光客が多く集まるような場所で起こったら、どうするのか?
東京五輪まで1年を迎えた新国立競技場=19日午後、東京都新宿区(本社チャーターヘリから、納冨康撮影)
東京五輪まで1年を迎えた新国立競技場=19日午後、東京都新宿区(本社チャーターヘリから、納冨康撮影)
 このように考えてみると、ハムザ暗殺は決して世界を安全にしたわけではない。まして東京オリンピックが安全になったわけではないのである。

 以上の文章で私が展開した諸々の提言が、オリンピックまでに少しであっても日本でも実現することを願うものである。


【iRONNAリアルイベント第2弾を開催!】
政治学者で元在沖縄米海兵隊政務外交部次長のロバート・D・エルドリッヂ氏とグローバル・イッシューズ総合研究所代表の吉川圭一氏を講師に迎え、対談形式の講演会を開催します。世界の秩序を大きく変えると共に、貿易交渉や日米安保の見直しなど、日本にとっても大きな影響力を持つ米国大統領、トランプについて激論を交わします。
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