もちろん、渋野の笑顔の力をギャラリーや私たち国民よりずっと以前から認め、「いつも笑顔でいなさい」と教えていた母、伸子さんの功績は偉大である。

 実は渋野には笑顔だけではなく、もう一つ他のトップゴルファーとも違う、彼女の類いまれなる点がある。それは「ゴルフに取り込まれ過ぎていない」ことである。

 もちろん、ゴルフはメンタルスポーツともいわれ、競技への集中度がスコアに直結することはいうまでもない。しかし、以下の三つの点で、単に「集中する」ことよりも、さらに上のメンタルコンディションを保っているのではないかと感じられるのである。

 まず、彼女は常に物事を「俯瞰(ふかん)」で見ているようにみえる。時にお菓子を食べながら、時に緊迫した場面でもキャディーと談笑しながら、時にあたかもプレー終了後のようにギャラリー対応をしながら、どこか人ごとのように、ゴルフに向き合っている。

 ただ、これが渋野なりのよい距離感でプレーと向き合っている証しでもあり、一歩空けてゴルフと向き合うことが、よい結果につながっているのだろう。

 自分のことであっても、物事を遠い空を飛ぶ鳥の目で俯瞰するようにしてみたり、人ごとのように一歩引いて考えられる。実は、強いメンタルを作り上げるうえで必須の要件である。

 不安になったり、結果が伴わなかったりすることもあるだろう。そんなとき、人はマイナスの気分に陥り、悩みのスパイラルに取り込まれやすくなる。

 しかし、直面している事態を全体的・総合的に見れば、よい結果が出ていた過去も思い出せたり、自分がこれからすべきことを冷静に考えられたりする。とりわけ1ホールごと、1ショットごとの浮き沈みが激しいゴルフ競技においては、実は集中すること以上に重要な、安定感につながる力なのではないかとさえ思わされる。
デサントレディース東海クラシック初日、ティーショットを放つ渋野日向子=2019年9月20日、新南愛知CC美浜C(戸加里真司撮影)
デサントレディース東海クラシック初日、ティーショットを放つ渋野日向子=2019年9月20日、新南愛知CC美浜C(戸加里真司撮影)
 また、彼女はプレー中に自分に課す目標設定が上手だ。インタビューにおいて、しばしば「攻める」「攻めたい」という言葉が出てくる。これはそもそものプレースタイルが攻めるスタイルであることに起因しているのであろうと思うが、重要なのは、この目標には「失敗」がないということである。

 目標というのはあくまで理想であって、当然達成されない場合もある。しかし「攻める」という目標は、よい結果が出ようが出まいが、彼女がその意志を持って打ったショットである限り、達成されているのである。