2019年09月21日 14:25 公開

ドナルド・トランプ米大統領が今年7月、外国首脳との電話中に、その国でジョー・バイデン前米副大統領について捜査するよう依頼し、見返りに、「非常に気がかりな約束」をしていた――。そんな報告を、米情報機関当局者が所管の監察総監にしていたとされる中、トランプ氏は20日、ホワイトハウスで記者団に対して、「馬鹿げている」、「政治的得点のためのでっちあげだ」などと反論した。電話した相手の外国首脳とは、今年4月に当選したウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と見られている。

バイデン前副大統領は、来年の米大統領選で野党・民主党の大統領候補になる可能性が有力視されている。複数の米紙報道によると、トランプ氏はゼレンスキー大統領に対して、バイデン氏ならびに、ウクライナのガス会社ブリスマの取締役だった息子のハンター・バイデン氏について捜査を要請し、その見返りに軍事支援の拡大を約束したという。

米紙ワシントン・ポストによると、このやりとりが「あまりに気がかりだ」と感じた情報当局者が、自分が属する機関の監察総監に報告。これを受けて、民主党はすでに調査に着手していたという。大統領と外国首脳との電話会談に同時通訳がつき、情報機関の担当者が内容を聞いているのは通常の手続き。

米紙ウォールストリート・ジャーナルは消息筋の話として、トランプ氏がゼレンスキー氏に「8回ほど繰り返し」、自分の顧問弁護士のルディ・ジュリアーニ氏と協力してハンター・バイデン氏を調べるよう促したものの、見返りは提供しなかったと伝えた。

こうした報道についてトランプ氏は、「ばかげた話だ。(民主党支持の)偏向した内部告発者だ。そんな情報を持っているのも不適切だ。自分は大勢の首脳と話をする。いつも適切な内容だ」と反論した。

その上でトランプ氏は、バイデン前副大統領の資産状況を点検すべきだと強調。「自分が誰と何を話したかは関係なく、だれかバイデンが持ってる何十億ドルもの金を調べるべきだ。でも君たちは調べない。バイデンは民主党だから」と述べた。

トランプ氏は19日にもツイッターで、自分と外国首脳との電話は常に米情報機関が内容を聞いていることは承知していると書いた。

一方で、バイデン氏は声明を発表し、「一連の報道が本当ならば、自分の権力を乱用してこの国をおとしめようとするトランプ大統領の意向は、本当にまったく底知らずだ。このふるまいは政治目的のため、この国の外交政策を悪用し、この国の安全保障を損なうもので、それだけに特に唾棄(だき)すべきものだ」、「このような明白な腐敗は、この国の政府の諸制度を個人の政治的復讐(ふくしゅう)の道具にしてしまう。それは、この国の政府の仕組みを傷つけ損なう」と批判した。

その上でバイデン氏は、「少なくともドナルド・トランプはただちに、問題の通話内容を公表して、アメリカ国民が自分たちで判断できるようにすべきだ。さらに、国家情報長官に対して、内部告発内容の議会提出を拒否することをやめるよう、命令すべきだ」と求めた。

野党・民主党の幹部、ナンシー・ペロシ下院議長は20日、情報機関の内部告発は、アメリカの国家安全保障にとって「深刻で緊急の懸念」をもたらしたと述べた。

トランプ氏とゼレンスキー氏の電話会談は、7月25日に行われた。情報当局者が監察総監に内部告発したのは、8月12日という。

ウクライナによると、両大統領は来週、ニューヨークで開かれる国連総会の際に会談する予定という。

「深刻で甚だしい問題」

米情報諸機関のマイケル・アトキンソン監察総監が連邦議会に宛てた手紙によると、告発内容は機密情報に関する「深刻で甚だしい問題、法律の乱用もしくは違反」に関するものだったという。

国家情報長官代行のジョセフ・マグワイヤ氏は今のところ、告発内容の詳細を議会に提出することを拒んでおり、民主党が強く反発している。国家情報長官だったダン・コーツ氏は7月末に辞任を発表した、8月半ばに退任。トランプ氏がマグワイヤを長官代行に任命した。

米連邦法では、監察総監への告発が「緊急の懸念」だと判断され、監察総監がその内容に「蓋然性がある」と判断すれば、その省庁のトップは7日以内に連邦議会に情報を共有しなくてはならない。

ウクライナとジュリアーニ弁護士

今回の内部告発の問題が表ざたになる前から、民主党は多数を占める連邦下院で、トランプ氏とその顧問弁護士のジュリアーニ氏によるウクライナとのやりとりについて、調査を開始していた。

下院の外交委、情報委、監督・政府改革委の委員長3人は、大統領とジュリアーニ氏が「大統領の再選を助け、政敵になり得る相手を標的にするため、ウクライナの司法制度を操作」しようとしたと非難していた。

民主党の委員長たちは、バイデン親子を捜査するよう、トランプ氏とジュリアーニ氏がウクライナ政府に圧力をかけようとしたと主張している。

これを受けて元ニューヨーク市長のジュリアーニ氏は19日、CNNに出演し、自分がウクライナにバイデン氏の捜査を依頼したかどうかについて、いったん否定してから「もちろんそうした!」と肯定し、発言が矛盾していると指摘されるとそれを否定した。

https://twitter.com/axios/status/1174855025048375296


これについてジュリアーニ氏は、自分は「巨大な贈収賄の仕組みにジョー・バイデンがわずかにでも関与したかもしれないという告発が、自分の依頼人(トランプ氏の意味)に関係する」ため、ウクライナに調べて欲しいと頼んだのだと説明した。

さらにツイッターでは、「汚職で有名な国で大統領に選ばれた相手に、アメリカの大統領がアメリカに関する汚職を調べた方がいいと伝えるのは、単に大統領としての仕事をしているだけだ」とも書いた。

トランプ氏と共和党は、大統領選に出馬しているバイデン氏の息子が、ウクライナの民間ガス会社ブリスマの役員だったことは、利益相反に当たるのではないかと批判している。

これについてウクライナの検事総長は今年5月、バイデン親子による何らかの不正行動があったという証拠はないと判断を示した。

(英語記事 Trump dismisses 'ridiculous story' about alleged promise to foreign leader