2019年09月30日 12:39 公開

ジャスティン・ロウラット、環境担当主任編集委員

スウェーデンの環境保護活動家グレタ・トゥーンベリさん(16)は怒っている。それは、気候変動についてだけではない。

トゥーンベリさんは26日、ソーシャルメディアに「ヘイター(憎悪をまき散らす人)が今まで以上に活発になっている」と投稿した。トゥーンベリさんによれば、ヘイターたちは気候危機について話す代わりに「私の見た目、服装、癖、他の人との違い」などを追いかけているという。

それが彼女の活動を止めるわけではない。トゥーンベリさんは翌27日、カナダ・モントリオールで行われた大規模な気候変動ストライキを先導し、大手航空会社にカーボン・フットプリント(企業活動による二酸化炭素(CO2)などの排出量)を減らすよう求めた。

しかし、トゥーンベリさんが非常にいらだっているのは確かだ。自分を非難する人のことを、うそや陰謀論を使って気候変動への注目をそらそうと「あらゆる一線を越えてくる」と批判している。

もちろん、彼女に注目が集まっていることは驚くに値しない。過去1年、グレタ・トゥーンベリさんは他の誰よりも、気候に関する世界的な活動を盛り立てるために動いてきたのだ。

そして、人々を物怖じさせるようなその言葉の力が、トゥーンベリさんの若さから来ている面があるのは間違いない。


トゥーンベリさんが23日に発した「How dare you! (よくもそんなことを)」というメッセージが強烈だったのは、冷房のきいたニューヨークの国連本部という場所に、彼女はあまりにもそぐわない存在だったからだろう。

若者が大人の世界に対してこれほど強引に、これほど公に責任を求めることは珍しい。そして明らかにこのことを嫌がっている人たちがいる。

ドナルド・トランプ米大統領がその一人だ。トランプ氏はツイッターで、トゥーンベリさんは「輝かしい素敵な未来を楽しみにしているとても幸せな少女に見える」と述べ、トゥーンベリさんをからかおうとした。

これに対しトゥーンベリさんは、スウェーデンのテレビ番組で「何か私について言おうとしたのは分かった」と話し、大統領の皮肉を笑い飛ばした。

https://www.youtube.com/watch?v=sVQzHAg2Tp8


もっと攻撃的な人は、トゥーンベリさんが怪しげな勢力に操られていると指摘する。

イギリスの大衆紙サンは、そうした勢力には「大手エネルギー企業や、強引なセレブリティーの両親も含まれる。(トゥーンベリさんの)母親は名声を欲していて、かつてユーロヴィジョン(欧州で人気の歌合戦番組)にも出ていた」と報じた。

また、オーストラリアのヘラルド・サン紙は、トゥーンベリさんは「大きな精神疾患を抱える地球温暖化をめぐる活動の救世主」だと書いた。

コラムニストのアンドリュー・ボルト氏は、「こんなに多くの精神疾患を抱え、こんなに多くの大人にグルとして扱われている少女を見たことがない」とつづっている。

では、グレタ・トゥーンベリという少女は本当にこうした批判者の言うような、精神疾患を抱えた陰気で危うい子どもなのだろうか。

私はトゥーンベリさんに、彼女がアメリカへ渡るためのヨットに乗り込んだプリマスで会ったが、陰気な人物では全くなかった。

トゥーンベリさんはちょうど強風の中、防波堤の先までヨットで行って帰ってきたばかりで、明らかにその体験にワクワクしていた。

そして本人に会ったことで、トゥーンベリさんが誰かから気候変動について話せと強制されているという考えが、空想だということが分かった。


トゥーンベリさんは8歳の時に世界の気候が変わっているということを聞き、ほとんど対策がなされていないことが理解できなかったと語った。

11歳の時までにトゥーンベリさんは、非常に強い不満と不安を抱えるようになった。食べるのをやめ、成長が止まり、誰とも話さなくなったという。

「私だけが気候や生態系の危機を心配しているように感じていた。両親も、クラスメイトも、親戚も、誰もこれについて心配していなくて、私だけだと思っていた」

トゥーンベリさんはこの事実を変えようと決意し、まず家族を相手に、気候変動に対する活動を開始した。

初めに、肉食をやめるよう両親を説得した。それから著名なオペラ歌手であり、仕事で旅行が欠かせない母親のマレナ・エルンマンさんに、飛行機の利用をやめさせた。

その次に行ったのが学校ストだった。ちょうど1年ほど前の2018年8月20日の金曜日、トゥーンベリさんは1人でスウェーデン議会の建物の前に立ち、今ではすっかり有名になった「Skolstrejk För Klimatet(気候のための学校スト)」というプラカードを掲げた。


その後に起きたことは歴史的といっていい。トゥーンベリさんはたちまち、世界で最も称賛され、同時に嫌悪される人物となった。

トゥーンベリさんはそれから、気候学者や活動家など、助言をくれるネットワークを構築した。でも采配を振るのはトゥーンベリさん自身だ。


トゥーンベリさんの近くにいる人々は、彼女が演説の内容を全て自分で書いていると認めている。プリマスで会った時、トゥーンベリさんは大西洋をわたる2週間の旅の間に、国連気候サミットで何を話すかを考えると話してくれた。

「危機が迫っていることを伝え、サミットの参加者こそが責任者なんだと言いたい。リーダーシップを見せろ!と」

23日の演説でトゥーンベリさんはそれを果たした。世界の指導者らに対して「私の夢と子ども時代を奪った」と批判し、「未来の世代の目はあなたたちに注がれている。もし私たちを失望させる道を選んだら、『絶対にあなたたちを許さない』と言うだろう」と警告した。

では、トゥーンベリさんの心の健康については? そもそも、それについてコメントする権利のある人はいるのだろうか?

トゥーンベリさんのすごいところは、科学に照らし合わせた上で、すぐにでも対策を取ることが必要だと冷静に述べている点だ。

トゥーンベリさんが、自身の精神状態が疑問視されているのを怒るのは当然だ。

「人と違うことは病気ではないし、現時点で手に入れられる最も科学的なものは意見じゃない。事実だ」と、トゥーンベリさんは述べている。

トゥーンベリさんは、過去にとても苦しい思いをしたことを認めているが、気候問題に立ち向かったことで、絶望から浮き上がったと話した。

「闘っているのが私独りじゃないというのは嬉しい。私の人生が後から何か意味のあるものになる、私のやっていることは意味があると感じている」

トゥーンベリさんは自身のアスペルガー症候群を、雑音を排除し、問題の中心が見えるようになる「超能力」と呼んでいる。

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自閉症の慈善団体「Autistica」の科学担当ディレクターを務めるジェイムズ・キューザック博士は、トゥーンベリさんがアスペルガー症候群を患っている人々の非常に重要なロールモデルになっていると話した。

「彼女の勇敢で、冷静で、科学に基づいて活動する姿は、多くの人を勇気付けている」

トゥーンベリさんはまた、気候変動への取り組みについて時に感情的になることについては、世界が十分な対策を取っていないことに憤慨し失望するからだと話している。

トゥーンベリさんは家族にしっかりと支えられている。父親のスヴァンテ・トゥーンベリさんは大西洋横断に同行し、その不自由な生活を分かち合った。母親のエルンマンさんと妹のベアタさんはスウェーデンに残っている。

近い将来にこの活動をやめるつもりは、トゥーンベリさんにはない。

また、世界が産業革命以前からの気温上昇を1.5度未満にとどめられるかどうかは、向こう数カ月が非常に重要になると語ってくれた。

さらに、CO2排出量は来年末までに減少に転じなくてはならず、そうでなければ、気候変動を食い止められる分岐点を越えてしまうと警告した。

しかし、昨年の全世界のCO2排出量は2.7%増加し、史上最高の371億トンを記録した。

国連本部での各国首脳の対応に、トゥーンベリさんはいら立っていた。首脳らはトゥーンベリさんの演説に丁寧な拍手を返したものの、温室効果ガスを大幅に減らすための新たなイニシアチブを打ち出さなかった。

そして、そのほとんどがトゥーンベリさんのメッセージや、サミットの数日前に何百万人もの人々が世界各国で道路を埋め尽くし、気候変動への措置を訴えたことに言及しなかった。

つまり、トゥーンベリさんにとっては気候変動への活動はなお進行中の仕事だということだ。

トゥーンベリさんは先に、ツイッターにこのように書いている。

「たぶん、(批判する人たちは)私たちに脅されているように感じているんだと思う。でも世界の目は開き始めている」

(英語記事 Greta Thunberg calls out the 'haters'