吉川圭一(グローバル・イッシューズ総合研究所代表)

 トランプ大統領がウクライナ政府にバイデン前副大統領の調査を働きかけたとされる「ウクライナ疑惑」が報じられてから日本国内では、トランプ大統領の政治生命は終わりつつあると考えている人が多いようだ。

 特にグローバル経済からメリットを得ている人々が、そう思いたいようである。しかし、それは正しい情報を得ていないことによる誤解だ。ウクライナ疑惑に関する米国報道を見ていると、2024年までトランプ政権が続く可能性は、むしろ高まり、またトランプ氏こそ日本の味方であることが分かる。それを説明してみよう。

 そもそもバイデン氏は、2018年1月に外交問題評議会で講演し、その中で「ウクライナとの10億ドルの援助と引き換えに、ウクライナのショーキン検事総長を解任させた」と公言している。つまりトランプ氏がやったと言われていることは、バイデン氏が既にやっていたのである。その講演の様子はユーチューブにもアップされていて、多くの米国民が、それを見てバイデン氏に対する不信を募らせている。

 この問題に関してバイデン氏は「ショーキン検事総長が政治的に腐敗していたから解任させた」と釈明している。ところが当時ショーキン氏は、なんとバイデン氏の息子ハンター氏を月5万ドルで雇った天然ガス会社、ブリスマ社の腐敗を追及していた。
 
 しかし、バイデン氏の圧力により、彼は2016年3月29日に解任されてしまった。この段階でブリスマ社の捜査は終了していたと報道するメディアが特にリベラル系に多いが、それは捜査資料の関係で英国に関わる部分の捜査だけであり、その他の部分に関する汚職と脱税に関する捜査は、2017年1月まで続いていた。ショーキン氏解任の1週間後、ハンター氏とも、そしてクリントン家とも親しいブルースター・ストラテジー社のロビイストが、ウクライナ大使館を通じて、ショーキン氏の後任のルツェンコ氏と面談している。

 ショーキン氏が追求していたブリスマ社関係の汚職の中には、バイデン氏の友人でブリスマ社の幹部だったアーチャー氏の関係で、米国の関連会社からブリスマ社に流れた300万ドルの資金の性質を調べることも含まれていた。この調査も立ち消えになった。やはり同時に追及されていたブリスマ社の脱税の問題も、ブルースター・ストラテジー社関連の弁護士の力により罰金で済んだ。
共同記者発表するバイデン米副大統領(左)と安倍晋三首相=2013年12月3日、首相官邸(酒巻俊介撮影)
共同記者発表するバイデン米副大統領(左)と安倍晋三首相=2013年12月3日、首相官邸(酒巻俊介撮影)
 どうしても納得のいかなかったウクライナ検察の関係者によって、この話は2018年夏に、米国の政治倫理法に違反しているのではないかと通報されたが、米国司法省は相手にしなかったという。そこでウクライナ検察関係者は在米ウクライナ人を通じてトランプ大統領の法律顧問、ジュリアーニ元ニューヨーク市長に相談した。反トランプ派は問題視しているが、トランプ氏の私的顧問のジュリアーニ氏がウクライナ問題に積極的に関係し、ウクライナ政府関係者と面談したりしたことも、不思議ではない。

 このようにウクライナ疑惑とは、ロシア疑惑同様、実は民主党の側の疑惑なのである。それをトランプ氏の疑惑にすり替えているのだ。