また、小・中学校などの避難所やマンションの3階以上に避難しても救助が難しく、電気や水道などのライフラインが使えない生活に長期間耐えなければいけないと指摘しています。先ほど述べたように、江戸川区で大規模な水害が起きると大部分が浸水し、浸水時間も長くなるからです。

 「ここにいては危険で、そうなる前に安全な場所に逃げてほしい」という行政の切羽詰まった思いが伝わるハザードマップではないでしょうか。しかも、今年の台風15号の停電地域とちょうど重なる被害予測でした。

 垂直避難する場合でも3階では不十分で、4階建て以上の建築物でなければ一時避難場所にも指定できません。しかも、江東区と江戸川区では、区庁舎が5メートル程度まで水没してしまうことが想定され、江戸川区は現在水害BCP(事業継続計画)に基づく新庁舎建設を準備しています。

 首都東京には、「ここにいてはダメです」という地域を「ここにいれば大丈夫!」という安全な地域に生まれ変わらせる安全対策が必要です。そこで私は、水害に対する「絶対安全高台」を目指す「首都東京ゼロメートル地帯『命山(いのちやま)』計画」を提唱しています。

 これは豪雨や洪水、台風、高潮、地震など、あらゆる災害に対し安全な東京につくり変える計画です。高度成長期に大量の工業用水を地下からくみ上げた結果として発生した地盤沈下に対し、ゼロメートル地帯を「絶対安全高台」につくり変える計画です。

 これまでも、東京を安全にするための高台造りが取り組まれてきました。約380ヘクタールある葛西臨海公園地区をはじめ、大島小松川公園や篠崎公園、平井や北小岩に建設されているスーパー堤防の高台化などは、先人たちによる不断の努力の「継承」です。

 計画の目標は、水害における犠牲者をゼロにすることです。命山の建設により、東京ゼロメートル地帯そのものを「コンパクトシティー」「スマートシティー」として再生します。

 あらゆる災害から電気やガス、水道などインフラ施設の継続を確保し、独立した場所としての安全性から、ゼロメートル地帯の居住者を一人残らず普段の生活を継続できるようにします。
首都東京ゼロメートル地帯「命山」計画著者作成)
首都東京ゼロメートル地帯「命山」計画著者作成)
 そのために市・区役所や警察、消防、学校、病院、福祉施設、障害者施設など全てを高台に配置します。これらの都市施設を高台に配置することで、防災機関としての機能を失わずに機能させ続けることができるのです。

 台風による高潮や洪水から東京を守ることは、一地域のローカルな問題にとどまりません。首都東京の安全が失われることは、日本という国家の存立問題であり、国そのものの継続性がかかっていることを忘れてはならないのです。