2019年10月03日 10:39 公開

世界トップクラスの選手なのに、ボールが手につかずポロポロ……。ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会で、そんな場面が目立っている。日本の「多湿」が原因のようだが、主催者の判断ミスを指摘する声も上がっている。

9月30日に神戸市御崎公園球技場であったスコットランド対サモア戦。パスを受けた選手の手からボールをスルッ、ボールを抱えて走っていた選手がボールをポロッ。両チームの選手に、初歩的なミスとも思えるプレーが相次いだ。


試合を取材したBBCスコットランドのトム・イングリッシュ記者は、「ボールが滑りやすく、パスがこぼれた。それが何回もあった」と書いた。

そして、会場の状況について、「サウナのように高温多湿で、英エジンバラ植物園の温室のように息苦しかった」と説明。開閉式の屋根が閉じられていたことを、「W杯主催者は間違った。この競技場を閉じるのは妙な決定だった」と批判した。

同球技場では3日、アイルランドとロシアが対戦する。アイルランドのフッカー、ナイル・スカネルは、「スコットランド対サモアの試合を見て、湿度の高さがはっきりわかった。非常に高い技術をもつ選手たちがボールをつかむのに苦労していたから」と話した


一方、2日に大分スポーツ公園総合競技場であったニュージーランド対カナダ戦も、開閉式の屋根を閉じて行われた。風が通らず、選手たちが大量の汗をかくなか、世界1位のニュージーランドにもパスのキャッチミスが何度か見られた。

ニュージーランドのキーラン・リード主将は試合後、「(湿度が高く)コンディションが厳しかった」と話した(ニュージーランドは63-0でカナダに勝利)。

せっけん、シャンプー、ベビーオイル

アジア初開催の今大会、各チームは日本の高温多湿の気候を考慮し、雨や湿気対策に取り組んできた。

スコットランドはシャンプーに浸したボールを使って練習。一方、ウェールズはベビーオイルにつけて、滑りやすいボールに慣れる努力をしてきた。

イングランドは水を張ったバケツをピッチわきに用意。ボールをいったんそこに入れてから、パスの練習を繰り返してきたと、アイランドの新聞アイリッシュタイムズは伝えている。

そのイングランドのロック、ジョウ・ローンチベリーは、9月26日のアメリカ戦を前に神戸市御崎公園球技場で練習をした後、英紙デイリー・メールに、「地元にいるときと比べるとボールが滑りやすい」とコメント。「ボールをしっかりつかむことが大事になるだろう」と語っていた(イングランドは45-7でアメリカに勝利した)。

10月3日に東大阪市花園ラグビー場でフィジーと対戦する、ジョージアのメラブ・シャリカゼ主将は1日、「このW杯では(湿度で)ボールが滑りやすくなっているのは明らかだ」と指摘。

ジョージアもせっけんを入れた水にボールを浸して練習してきたことを明かし、「その効果が表れることを願っている」と話した。

しかし、今大会のこれまでの試合を見る限り、滑るボールに悩まされていないチームはほとんどないように思える。

「呼吸すら違う」

日本の湿度の高さは、ボールを滑りやすくする以外にも、選手に影響を及ぼしている。

アイルランドのプロップとしてスクラム最前列で相手と押し合うキアン・ヒーリー選手は、日本での試合について、「呼吸すらいつもと違ってくる。太陽の下でプレーする感じとは全然違う」。

さらに、「プレー中の休憩時間で、素早くいつもの状態に戻すことはできる。でも(ひとつの)プレーの時間が長引くと、肺にかなり負担がかかる」と語っている。

同条件にするために

湿度対策として、屋根が開閉式の会場では、開け放って風通しをよくしたらいいのではないか――。そう考える人は少なくないだろう。

しかし、現実にはそれが許されない。1つの会場で複数の試合を開く場合は、全試合を同じ条件にしなければならないと、ラグビーの国際統括団体ワールドラグビーが定めているからだ。

そのため、神戸市御崎公園球技場では、3日にあるアイルランド対ロシア戦も、8日の南アフリカ対カナダ戦も、屋根を閉じた状態で開かれることになる。

また、大分スポーツ公園総合競技場はこの先、1次リーグ2試合と準々決勝2試合の会場となる。それらもすべて、屋根を閉じた状態で開催されることになる。

一流選手による似つかわしくないミスは、それを楽しめるか残念に思うかにかかわらず、まだまだ目にすることになりそうだ。

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